この3日間、日露首脳会談についてテレビ・ラジオ局から声が掛り、都合がつく範囲で出演した。

 その中で痛感したのは間違った歴史感と認識、日本の主張を強くすることだという独りよがりの一方的な価値観を話す人がいることに驚いた。

 外交には相手がある。自国の主張を何億回言っても交渉にならない。責任ある外交は運動ではなく交渉して結果を残すことでる。

 その結果は時に100点満点ではないし、結果として妥協、折り合いの産物でもある。

「北方四島が固有の領土だから四島返還を主張すれ」と言えば入り口でストップし交渉にならない。国境画定、領土問題解決には裏付けが必要だ。

唯一、日本・ロシア両国の国会が批准しているのは1956年の日ソ共同宣言のみだ(1956年のソ連はロシアが継承している)。

このことはプーチン大統領がソ連、ロシアの最高指導者として2000年9月東京で最初に認め、2001年3月25日イルクーツク宣言で文書にしている。

昨夜、あるインターネットテレビ番組で青山繁晴氏が、日本が国際社会に復帰した1951年のサンフランシスコ講和条約は無効だと声高に言われた。

これは日本が連合各国との平和条約でこのことにより連合国による占領は終わり、日本が主権を回復したのである。これを無効と言うのだから驚いた。

知の巨人と言われる佐藤優氏は「頭に虫が入っているような話だ。全く判っていない。48カ国の国が無効だというのなら無効になるが、どこも無効という国はない。ソ連は署名していないからソ連に対して無効とはいえるが、国際社会の議論として認められることではない」と教えてくれた。

今、世界を見る時、日本一国で生きてはいけない。国際協調の中でお互いの立場を尊重しながらやっていくしかない。北方領土も平和条約が結ばれないと還ってこないのである。

1956年の日ソ共同宣言も平和条約締結の後、歯舞群島・色丹島をソ連の善意で引き渡すとなっている。それならば平和条約締結に向けての環境整備をしていくしかない。

その為の大きな一歩として特別の枠組みを作り、北方四島における共同経済活動をすることで合意したことの意味は重い。

ロシアが実効支配している地域で主権に触れずお互いの立場を害さない仕組みを作ることで合意したのは正に平和条約締結に向けての新しいスタート台に立ったといって良い。

領土問題が表に出ていないという人は外交を知らない勉強不足の人である。それは交渉過程、進行中の話は表に出してはいけないのである。

プーチン大統領を追い詰めたり、また安倍首相に縛りをかけては外交にならないことを政治家はしっかり頭に入れるべきだ。

元島民の自由往来も画期的な合意だ。それは元島民が自分の経験を踏まえ、友好の島、親善の島、共生の島にしたい。その為に故郷に自由に行きたい、先祖のお墓参りもしたいと手紙で訴えたことにプーチン大統領が理解した結果である。これも平和条約締結に関係しているのだ。

こうしたことを考える時、今回の日露首脳会談は平和条約締結へ向けて大きな一歩、道筋を付けたことになる。

日露首脳会談は間違いなく現実的解決に向けて大きなかじは斬られたと安倍首相の手腕を称えたい。