香港に戻るといつも通りの拷問生活が始まった。実際には北海道にいる時も同じような拷問を受けていたが、それでも、香港では状況が少し違った。

 

夜のビープ音が止ることはなく、また、昼には相変わらず工事のドリルの音が鳴り響いていた。それでも、窓を閉じると二酸化炭素が注入されるため、部屋は閉じられる状況になかった。それは冷房も使えないことを意味しているが、依然として真夏の香港の夜は寝られるようなものではなく、それも睡眠を奪う要因になった。

 

 最初のうちはまだ体力があったが、数日で訳が分からない状態になった。たばこはもう止めていたので、そこに薬を入れられることはなかったが、それでも意識はおかしかった。

 

それは薬物で朦朧とする感じではなく、睡眠不足と極端な頭痛で頭が機能していなかった。睡眠不足の結果として頭痛がひどくなっているような気もしたが、根本的に違う痛みの要因を感じていた。

 

 それは電波操作で瞬間的に痛みが生み出されているのでもなかった。もちろん、電波操作で痛みを強くされてはいたが、それよりも、根本的に脳内で何らかの変化が起きたような気がしていた。頭が少し重く、それは頭痛とは微妙に違うもので、それらが全て合わさって、頭が正常ではなくなっていた。

 

 頭が痛く睡眠の摂れない日が続き、精神的なダメージも蓄積していった。とは言え、着いて2日目までにやるべきことは終わらせていたので、特に何かをしなければならないこともなかった。

 

 外に出る必要は全くなかったが、そのうち、普通に外に出られないようになってきた。ほとんど家の中で暮しており、それは睡眠が摂れる時に寝るためでもあったが、日が経つに連れて朝も夜も分からなくなってきた。

 

 電波操作で頭がおかしくなる時はいつもこんな感じになる。ただし、この時はノイズやその他の工作のせいで睡眠不足になっており、それが頭痛を生み出し、その頭痛が強化されることによって頭の機能が更に低下していた。少なくとも、自分はそのように捉えていた。

 

 一方で、ドラッグを入れられると、そういう状況的な変化とは全く関係なく、その薬物が効果を発揮した瞬間から訳が分からなくなる。そのため、これら2つの脳の機能低下は根本的に異なる現象であり、時間が経ってから振り返ると、それらの影響の差を区別できた。

 

 ただし、実際に頭が機能しなくなっている間は何が起こっているかはあまり分かっておらず、何もできないまま、起きるともなく、寝るともなく、ただ時間だけが過ぎていった。

 

 

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