「かーごめ、かごめ、かーごーのなぁかの鳥は、いついつでーあーうー」

俺は遊び歌を歌っている子供の集団を眺めていた。

多分・・・次郎、四郎、いつ子、むつ子、なな子か!? そして真ん中にいるのがよう子だろう。

いつもの夢を見て、違和感がなくなってしまってる俺は自家のリビングのソファーで新聞を読んでいた。

妻が琴子。違和感がありありなんだが、夢の中だと何でも有りだから良いのかとも思う。

「ねえ、入江くん」

背後から声をかけられて、内心ビクッとしたがおくびにも出さず「何だ、琴子」と答えた。

「お昼ご飯、何がいいかな!?」

その質問の内容の方が格段に怖かった。。。

「お前に何が出来るんだよ」と言って振り返ると、琴子が寂しそうに笑う。

何故か胸がズキッと痛んで琴子から目を背けて、遊んでる子供達を眺めるフリをした。

琴子の「松本姉のご飯の方が美味しいよね」の呟きが聞こえて、また振り返ると琴子が涙を堪えるように歯を食いしばり「や・・・やっぱり、入江くんは松本さんと・・・」と苦しい物を吐き出すかの様に言う。

俺はソファーから立ち上がり琴子を背後から抱きしめる。

「お前との間に子供8人も作っておいて、今更松本もねえだろ」

「だって・・・だって・・・あたしのご飯はマズくて食べられないって・・・」

ソファーのへりを握り締めながら泣くのを堪えている琴子を俺の方へ向かせ俺の胸に埋める。

お前は俺に抱かれてりゃいいんだよっむかっ

「ママの後ろの正面はいつもパパだね」

そう言われ辺りを確認すると、俺の横に俺に似た顔の琴子と同じ思った事をそのまま口にするヤツが立っていた。

すなわち、なな子。

「パパ、あたしもギューして」と、腕を広げて待つなな子。

俺はなな子の頭を撫でて「後でな」と言い、琴子を抱えて「上に行ってくる」と告げた。

上っていうと増築されたから、俺の部屋も復活したし・・・と余計な事を考えていると、太郎が「上には行かせねえ」と俺の前に立ちふさがる。

俺は「邪魔だ、どけ!!」と言うと「琴子を泣かすヤツに琴子は渡せない」と返された。

俺はムッとして「琴子を泣かせるのは俺だけの特権なんだよ」と太郎に告げ、琴子に「なあ、琴子」と問う。

琴子は「あたしの感情は全て入江くんのもの」と言った。

それでこそ、琴子。

俺は抱きかかえたまま、琴子にkiss・・・。


の、直前で目が覚めた。

琴子が泊まって以来、俺はまた頻繁にあの夢を見る様になってしまった。

「なな子との約束・・・守れな・・・何だよ、それむかっ

俺は頭から思い切りシャワーを浴びて覚醒を促した。


こういう夢見が悪く、機嫌が悪い時に限ってやってくれるのが琴子ってヤツで・・・。

「と、いうわけで今日から入ってもらう相原琴子さんです」とドニーズの店長から新しく入ったアルバイトを紹介される。

「よろしくお願いしますラブラブ」と毎日会っている琴子から頭を下げられ、俺は気がおかしくなりそうだった。

宜しくされたくなんかねえむかっ

俺は満面の笑みの琴子を睨みつけていた。