さっき琴子と言い合いになった。相変わらずの琴子はもうすぐGWだからと自分で申し込んだ教育実習の準備も忘れてどこへ遊びに行こうと俺を誘う。

そんな時間はどこにもないと言って喧嘩になり、おふくろが口を挟んできた。

俺は2年半の勉強の遅れを取り戻したいと思っていて、その努力は怠らない。

だが琴子はもう大学4年になるというのに自分の夢をおざなりにして目先の快楽に走ろうとする。

自分で教師という道を決めたのならそこへまい進すべきなのに、何を甘えた事を考えているのだか。

そんな相手に教えられたいとは思わない・・・俺だったら。

はっきり言うと琴子には教師は向かないと思うが、だったら何が向くのかと聞かれると返答に困る上夢は自分で決めるものだから口出しすべきではないと思う。

俺が決めてはダメなんだ。

琴子に医者は無理だから・・・何を思ったのか『先生』になりたいと考えるならそうすべきだと思うし、なりたい夢を見つけたのなら夫としては見守るべきだろう。

本当の夢はそこに無い気がするが、遠回りしたとしても遠回りが無価値だとは思わない。

・・・俺がそうだった様に。

パンダイの社長の椅子に座るべき人間じゃない事はよく分かったから、俺は自分の決めた道をまい進できる。

そして琴子という一生涯の妻を得たのだから、今後の生活もかかっている事だし迷っている暇もない。

俺が決めたからと言って琴子も今すぐ決めなければならないなんて事はない。

分かっている・・・だが、こうも呑気だとそんないい加減な夢に振り回される生徒の身を案じてしまう。

だから叱った。


それが気にくわないとこうして布団の中に巣ごもりしている訳なのだが・・・。

それでも俺は間違えていない。早くそこに気づけ琴子。

これ以上言っても無駄だと思うから何も言わずに琴子の横に身体を滑りこませ電気を消す。

きっと琴子は謝らないだろうと思ったら意外にも「入江くん、ごめんなさい」と小さい声ながら謝る声が聞こえた。

「俺が何故叱ったか分かってるのか!? 謝れば許されると思ったら間違いだ」と言ったら「分かってる」と言って布団が動く気配が伝わってきた。

というか実際に動いて俺の肩に空気が当たった。

「あのね・・・あのね・・・あのね・・・あたし、自分の事しか考えてなかった。入江くんの様にしっかりと考えないとダメだね。自分で申し込みしたんだもん。元F組のあたしに教えられる人が可哀想って裕樹に言われて『そんな事ない』って言ったけど冷静に考えたら確かにそうなのよ。入江くんと結婚して賢くなった気がしたけど、あたしの頭はあたしの頭なんだよね。さっきテキスト読んだら難しくって・・・自分が馬鹿だーって思ったら落ち込んじゃった。でもね、申し込みした以上はやるわ。裕樹をギャフンって言わせるの。だからね・・・」と言った琴子を布団の中に引きずり込んだ。

「寒い!!」と抱きしめながら言うと琴子が腕の中でモゾモゾと動く。

「ご、ごめんね入江くん。決して風邪を引かせようなんて思ってなくて・・・」とモゴモゴ言い訳する琴子の口を俺の口で塞いだ。

「分かってるから寝ろ。このまま喋ってたらお前の事だから無駄に1時間かかるぞ」と言ったら「酷い!!」と怒る。

でも「そーかもしれないけど・・・け、決意を入江くんに聞いて欲しかったのに」と言われて「そうしたら俺も寝られないだろ」と返すと「うっ」と言葉に詰まっていた。

その間に琴子を抱きしめたこの身体が熱くなってくる。

『先生』になると、裕樹だけじゃない中学生男子を教える訳だよな。

裕樹は大丈夫にしても、その年代で元F組の教生を弄らない斗南男子中学生は居ないだろう。

・・・A組は例外かもだが、絶対その他は保証しない。

琴子は俺の妻だ!!

「なあ、寝る前に適度な運動が睡眠を促すって琴子も知ってるよな」と琴子の耳を甘噛みしながら言うと琴子は腕の中でコクッと頷いた。

その夜も美味しく琴子をいただき、ぐっすり眠った俺だった。

因みに適度だったのは俺だけで、琴子にとっては過度だった様だが・・・。

俺は休日の朝にベッドから起き上がれない琴子を見ながらニヤリと笑った。
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