家を出て数歩あるいたところでコートを忘れた事に気づいたが、決まりが悪くて戻れる訳がなかった。

しばらく・・・というか、もう家へは戻れないだろうからまずコートをどうするか考えなければ。

流石に口座を止めるという事はしないだろうから、俺の生活は守られるだろう。

だが、これからはどうする?? こんなのは自分らしくないと思いながらも、いつかはこうなる運命だったと言い聞かせた。

親父もおふくろも俺の事を人として扱ってない。俺の事は自分の意の通りに動くコマでしかなく・・・。

後ろから「入江くん」と大声で呼ばれ、琴子が俺を追いかけて走って来た事を知った。

ま・・・ま・・・コート。コート忘れてる」と叫ばれて、琴子が俺の為に走って来た事が分かった。

お前って・・・。

俺ははっきりと琴子との恋愛はお断りだと目の前で告げたにも関わらず、俺の身を心配してこうして世話を焼くんだなとホッとするやら呆れるやら・・・。

それでも追いかけてくれた感謝で素直に受け取る事にした。

受け取る際、慌てた琴子も上着無しのセーターで外に飛び出した事を知ったが、琴子にそのコートを貸すとまた俺が家に戻らなければいけないので気にしないフリをする。

T大の受験の時と気分は一緒で琴子を早く家に帰したかったが、相変わらずな琴子はこの空気を読まずに話しかけてくる。

あ、あの・・・えっと・・・お、おばさん、ち、ちょっと興奮しちゃったんだよね。ほ、ほら、入江くんって普段、何もいわないからみんなヤキモキして焦っちゃって、そ、それであんな事に・・・」と言われ、俺のせいか!?と琴子のセリフに内心悪態をつく。

「で、でも、入江くんの言った事もわかるわ。な、なんたって自分の将来だもんね。あせったって仕事も、恋愛も・・・・・・

琴子の声が徐々に尻すぼみになり、震えているのが分かった。

『恋愛まで自由にさせてもらえないなんて』

「ダ・・・ダメだよね。う・・・うん、そ・・・そう・・・

琴子に、あの時言った相手はおふくろであってお前じゃない と、言ったら涙は止まるのかと聞きたい。

親父やおふくろを泣かせても、お前を泣かせたい訳じゃなく・・・

「俺は医者になりたいんだ」

何と言っていいか分からず、思っているままを口にした。

琴子へ借りを作りたくない。強いて言えばコートの礼。

「今度医学部受け直して勉強してみたい。俺に向いてるかどうか分からないけど、初めて興味をもった仕事なんだ」

そう言ったところで駅についたので財布を取り出して切符を買う。

「ただ、まだ親父に言える段階じゃないから、まだ自分でも迷ってたし・・・」

琴子に言いながら、自分の中の迷いを吹っ切る。一番伝えたかった奴に言う事で・・・。

俺の秘密を聞いて戸惑った琴子が「なんで・・・あたしに?」と聞いてきた。

言えるか、バーカ。

「・・・さあ」

この答えは半分は本当だ。まだ琴子に聞かせるかも迷っていたから。

「まだ、誰にも言うなよ」と釘を刺し、いくらでも来る電車にさも早く乗りたい風を装って琴子を振り切った。
薄着な琴子はここに居るべきではない。

しばらくは実家に帰れないから・・・会うなら大学だ。

風邪なんか引くなよと思いながら電車に乗った。

* * *
風邪ひくなと書きましたがしっかり風邪ひいてますカゼ これで来週のネタも尽きました(マスク同様真っ白~)
2月中に終える約束だけは守れたので良かったかな!? 長めにお休みして、ブログ整理するか悩みますが、まだ決めていないので今のところは週一程度は書きたいと思います。
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