少しはきれいに見せたい。
そう思って、玄関先の門扉付近には花を飾ってある。
広々とした花壇があるわけでなく、タイル敷きになっているため、飾り方は寄せ植えが中心だ。
数種類の植物を1つの鉢に植えたものをいくつか置く。あるいは、ハンギングバスケットとして門扉に掛ける。時には、1~2種類の植物だけ植えた鉢を複数組み合わせて飾りつける。いわゆる寄せ鉢という手法である。
飾りつけると気分がいい。これで、通りがかった人たちにほめられでもしたら、一層派手に飾りだすかもしれない。それほど快感なのである。
反面、問題点もある。
いや、問題というほどのことでもないのだが、つい先日もこんな場面があった。
家族で出かけて戻って来た時のこと。
車を降りた子供たちが玄関に向かう途中、飾ってある花に来ていたミツバチが「ブンブン」音をたてながら寄ってきた。
「ぎゃー!」と言って、一目散に玄関内へ逃げ込む子供たち。
まあ、ミツバチは何もしないだろうし、たいしたことはないと思うのだが・・・。
そもそも、植物が花を咲かすのは、虫や鳥を呼ぶことが目的なのだ。
やってきた虫や鳥に様々な方法で花粉を運んでもらう。だから、きれいにしたいと言って花を飾り付けることは、植物からみれば迷惑なのかもしれない。
植物にとって、興味はあくまで虫や鳥なのだ。
さて、この寄せ植えについて、先ごろ読んだ本に「はっ」とすることが書かれていた。『植物のあっぱれな生き方』という本である。著者は甲南大学理工学部教授の田中修さん。
驚いた内容(抜粋)はこうだ。
「寄せ植えにされた植物の仲が良さそうに見えるのは誤解である。」
「もし、作り手が仲良く見せようとしているのならば、それは偽装である。」
「植物同士は互いに虫たちを誘い込むために、競いあっているライバルなのである。」
冷静に考えてみればそのとおりだと納得できるが、いきなり「誤解」とか「偽装」といった思いもよらない言葉が並んでいるとひるんでしまう。
一方、こんなふうにも書かれていた。
「寄せ植えは、人間で言う婚活会場のようなものであり、たくさんの花があったほうが虫を集めるにはアピール度が高いかもしれない。虫が集まった後は、植物同士で競いあうことになる」と。
とにかく面白いことがたくさん書かれた本なのでおススメである。
ところで、植物同士が生きていくために競いあっているとしたら、花はよりきれいになっていかないのだろうか。より鮮やかに、目立つようにと。
もちろん、長いスパンで考えた場合になるだろうけれど。
そのためには、1年間寄せ植えを維持させるという試練があるかもしれないが、試してみるのも悪くないかも・・・。