私のちいさなピアニスト(06・韓) | no movie no life

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・・・映画を見て思ったことをツラツラと。ネタバレです。

かなり昔に書いたのも。

ラフマニノフに、涙が流れる。


原題「For Horowitz」。 ウクライナのピアニスト、ホロヴィッツを敬愛するジスは、プロピアニストになる夢をあきらめ、ある町でピアノ教室を開き自活しようとする。なかなか生徒が集まらずに苦労するが、いたずら好きな少年キョンミンが、すばらしい音楽的才能に溢れていることを知る。ジヌはキョンミンにピアノを教えこみ、コンクールに出そうとするが・・・


韓国ではかつての日本のように受験戦争が厳しいと聞いたことがある。子どもの将来に期待する親、それに添おうとする子ども・・・そしてそのエリートの道から反れてしまった人間の行き所のない気持ちや劣等感。少し前に観た韓国映画「私たちの幸せな時間」と似ていると思った。

主人公のピアノ教師ジヌは、親に苦労をかけ音楽大学に進んだものの、海外留学できずに国内にとどまり、結局はプロや大学教授になれなかった。それが彼女のその後の人生に棘のように突き刺さっていた。自分は挫折した人間だ。同期の友人は大学教授になっているのに。・・・ジヌは、留学できなかったことを理由にしてみたりする。しかし、自分自身をあるがままに認め、人生を歩もうとするきっかけを与えてくれたのは、キョンミンだった。


ジヌは、当初キョンミンを宣伝材料程度にしか考えていなかった。あくまでも自分の生活のための道具としてしか見ていなかった。ところが、彼の不安定な心に寄り添うことで、ジヌは真に音楽とキョンミンの将来を思い、キョンミンを海外の有名な指導者に託す。彼はここにいてはダメなのだと。


キョンミンもまたジヌとの出会いによって大きく人生を変えた。「のだめカンタービレ」でもあったが、偉大な音楽家には、自分の才能を見出してくれた人をはじめとする、よき理解者に恵まれることが必要なのだろう。逆に言えばそのチャンスを掴むことができるものが、偉大な音楽家の道を歩めるのかもしれない。


全編流れるピアノ曲が心地よい。最初はコメディー路線なのかな?と思ったが、最後の演奏で締めてくれた。涙が溢れたのは、ピアノの素晴らしさとともに、そこに至るまでの厳しい道のりを思ったからだ。そして彼もまたジヌとの出会いを大切に思っていたからだ。


音楽は人の心を救う。音楽に魅せられた人々の、優しい優しいストーリーである。

※今後、「4分間のピアニスト」、「僕のピアノコンチェルト」など音楽作品が続くのが嬉しい。特に「4分間~」は期待大!


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