変態スクリーンモード | MSX研究所日記

変態スクリーンモード

MSX2以降に特有の技術として、複数のスクリーンモードを一つの画面に共存させる、というものがあります。そんなことできるの?とよく言われますが、特定のスクリーンモードの組み合わせであれば可能です。現実には実行速度の問題があり、決して簡単にはできませんが…。オールアセンブラでの開発を必須とする難テクニックの一つです。さて実際にそれをやっているソフトをご紹介しましょう。探してみると結構あるもんです。

サイコワールド(1988年・ヘルツ)

恐らく市販ソフトとして最初に実現したのがこの「サイコワールド」でしょう。横スクロール機能を持たないMSX2で滑らかなスクロールを実現したソフトとして知られますが、メイン画面(上側)がスクリーン4、インジケータ(下側)がスクリーン5で作られています。ちなみにデモ画面もCGがスクリーン8、文字がスクリーン7という共存をごくさりげなくやっていたりもします。さりげなさ過ぎてほとんど誰も気づいてないようでしたが。なかなか面白いアクションゲームなのですが、H.P(体力)ゲージとESP(超能力)ゲージがより合わさっているのが死ぬほど分かりづらいです!頑張ったのは分かるんだけど!

ハイディフォス(1989年・ヘルツ)

「サイコワールド」の技術を活かして作られたヘルツ第2作のシューティングゲーム。独特の演出がMSXマニアに愛されている作品です。同時期の「スペースマンボウ」に比べるといささかケレン味に欠けるものの、終盤のチェイスシーンなどは必見です。これも「サイコワールド」と同じく、上がスクリーン4、下がスクリーン5です。やはりデモ画面でスクリーン7と8の共存をやっています。

ファイアーホーク テグザー2(ゲームアーツ・1989年)

1985年にPC-8801mkIISRのキラーソフトとして発売された「テグザー」の続編です。「テグザー」MSX1版はコパイルが開発し、良い出来ながらも常識的な作りでした…が、続編はゲームアーツ自身の技術力でかなりの完成度を誇っています。やはり上側はスクリーン4、下がスクリーン5ですが、PCGとスプライトの絶妙な重ね方、縦スクロール機能の応用でクリッピングを正確にするなど、変態的とも言える作りです。海外でも技術的に最も凄い(でもそれが知られていない)ソフトNo.1と呼ばれている…らしいです。
(2005/12/23追記)間違えました。これは上も下もスクリーンモード4でした。顔CGもPCG+スプライトを使っている模様!それでも全体で凄い技術には変わりません。(情報提供・ニューファンキー小林さん)

アークスII ~サイレントシンフォニー~(ウルフチーム・1989年)

これは…見てのとおりRPG風味の作りになっており、メイン画面(上側)がスクリーン5で、メッセージがスクリーン6なんですが…えーと、何のためにこんな構成にしたのか全く謎です。凝ってはいますが非常に重く、「ただやってみたかった」感のぬぐえない完成度です。

関係ありませんが、MSX2版でも発売された前作「アークス」は他機種とストーリー(特にエンディング)が全然違っています。ところがMSX2版のアークスIIのストーリーは他機種と同じため、スタート直後からいきなり前作と矛盾した状態で始まるという凄すぎる作品です。よくワゴンセールに見かけましたねえ…。

スペースマンボウ(コナミ・1989年)

MSXにおける横スクロールシューティングゲームの最高傑作、との呼び名も高い作品です。実はコレ、ずーっと全部スクリーン4だと思ってたんですが、上側インジケータはスクリーン5なんですね。自機数を示す三角とか、パワーアップケージの黄色の部分とかを見ると、確かにスクリーン5なんですが。4より5のほうがいい事情があったんでしょうか。メイン画面もスクリーン4であることを全く感じさせないほどの完成度ですが、元は全く別のゲームだったのを「つまんないから」という理由で、グラフィックをたった2週間で一気に別のゲームになるまで書き換えた、という伝説も有名です。

3-D CAR ACTION F-nano2(Xray・1994年)

これだけは同人ソフトです。turboR専用のレースゲームなのですが、なんと上のインジケータ部分がスクリーン4、遠景がスクリーン5、そして一番下のメイン画面はスクリーン3!解像度が異様に荒いために滅多に使われないモードを使って、高速な描画を実現した怪作です。自分の記録(一般に言うゴースト)との対戦をメインに据えているため、遊べば遊ぶほど敵車も速くなっていきます。技術力倒れになりがちな同人ソフトの中で、過去の自分との対戦がひたすら熱い名作です。