【キャリア理論が必要な理由】

 

心理カウンセリングには、きちんとしたカウンセリング理論があり、専門家はこれらの理論をベースにしたカウンセリングを行います。

 

そうする理由は、自分の経験や価値観に頼ってしまう、偏ったカウンセリングを防止するためです。理論で展開される考え方は、一部の個人的経験ではなく、一般化された汎用的な考え方であるため、多くの人に適応する部分があります。

 

カウンセリング理論は、カウンセリングを行う専門家にとって強力なツールになりますが、カウンセリングを受けるクライアントにとっても、自己理解や生き方を見直すための良き指南書となるでしょう。

 

キャリア理論がどうしてあるのかという理由も、心理カウンセリングに理論がどうしてあるのかという理由と全く同じです。

 

そもそも、「キャリアとは何か」「働くとはどういうことか」といった言葉の定義自体、いろいろな考え方があります。「その1つ1つを検証するなんてめんどい話だ。自分の経験だけを信じてキャリや働くことを考えればいいじゃないか」という意見もあるでしょう。しかし、大切なことは、多様な見方・考え方を受け入れて、その中から自分に合った見方や考え方を構築していくことだと思います。

 

そんな時に役立つのが理論です。キャリアカウンセリングを行う人も、キャリアカウンセリングを受ける人も、そして、キャリの問題に真剣に取り組む人にも必要となるのが、キャリア理論だと言えます。

 

 

【キャリア理論はどんなことに役立つか?】

 

理論というのは「複雑な世界から、意味ある規則的な関係を導き出して、私たちの理解を助けてくれるガイド」的な働きを持ちます。

 

それでは、キャリア理論にはどのような「ガイド的働き」があるのでしょうか?

 

ここで、キャリアを、「複雑な人生の中での歩み方」といった意味にとらえて考えたとき、キャリア理論には次のような役割があると思われます。

 

 

(1)自己理解をするために、どのように考えたらよいかのフレームを提供する

 

(2)現在の課題を認識し、将来の課題を予測し、生き方を支援する

 

(3)「人生の選択」においての合理的な意思決定の方法を提供する

 

 

(1)について、よく「過去を振り返って経験の棚卸しをし、それを将来に活かすことが大事だ」と言われますが、それをどうやってすればよいのか、その方法については、あまり知られていませんね。

 

そんなときに役立つのが、ある種のキャリア理論になります。

 

(2)について、青年期や中年期といった、人生のある時期における一般的に抱えやすい課題というものがあります。それらの課題にはどのようなものがあり、どんな対策が考えられるかを予め知っておけば、人生の備えになりますね。

 

(3)について、意思決定には、網羅的な「選択肢」と「判断基準」を持つことが重要です。それらをどのように持てば良いのかを理論から得ておけば、自分の偏った経験だけで誤った選択をする恐れを防ぐことができます。

 

 

【キャリア理論の種類】

 

キャリアは産業心理学・組織心理学・職業心理学・カウンセリング心理学・

職業心理学・キャリア発達論など様々な学問分野を包含するテーマなので

多くの理論が存在しています。

 

 

 

そして現在、全ての理論を統一したものは存在していないと言われています。

 

その理論の分類方法も様々なものがありますが、ここでは私が最も分かりやすいと思う分類を紹介したいと思います。

 

それは、進路選択・発達の原因・内容に焦点をあてる「内容理論」と、過程のメカニズムに焦点をあてている「過程理論」とで分類したものです。

 

【内容理論】

 

(1)特性-因子理論・・・個人の能力や興味などの特性と職種側の要請する要因とが適合すれば、職業選択・適応の問題は解決する。

 

(2)人格理論・・・職業(進路)選択の原因を、主に、個人の人格的諸特徴(欲求・興味・性格など)と関係づけて説明している。

 

(3)状況理論・・・職業(進路)選択には、個人をとりまく環境状況(社会的・経済的・偶然的要因など)が影響を与えている。

 

【過程理論】

 

(1)発達理論・・・職業(進路)選択や適応をめぐる行動は、個人の継続的な過程であり、いくつかの発達段階を経由する。

 

(2)意思決定理論・・・職業(進路)選択を。個人の意思決定の連続的な過程としてとらえ、そのメカニズムを解明しようとしている。

 

(3)社会的認知理論・・・職業(進路)選択の過程を、社会的認知(学習)理論に基づいて、認知的メカニズムの視点から説明している。

 

 

今後このブログでは、不定期に、個々の有名なキャリア理論についてもご紹介していく予定です。

 

お楽しみにしてください。