ソウシ誕2 | 夜の羊の本棚

夜の羊の本棚

ソーシャルゲーム”恋に落ちた海賊王” ”戦国LOVERS”の夢小説を書いています。

更新不定期。

小説らしい文章スタイルを目指しています。

もう誕生日、とっくに終わってんですけど…と言う突っ込みはなしで汗☆
内容も、甘くもなんともないです(相変わらず致命的だな!)
ただソウシさんと、教会に行きたかっただけです。
暇だから読んでやるぜと言う方、ありがとうございます、どうぞ下にお進みください↓↓






ソウシ誕・後編



ユエはキッチンに駆け込むと、すみません、と話しかけた。強い語調になりそうになるのを何とか押さえ込んで呼びかけたつもりだったのだが、勢いよく飛び込んできたユエに女は目を丸くしてこちらを見た。

「あらあら、あわててどうしたの?」

「あの、今日の夕食を作るの、手伝わせていただけませんか?」

何事か起きたのかと驚いていた女の顔に、なんだそんなことかといった表情が浮かび、

「そんなの、いいのよ。こんな田舎までわざわざ頼んで来てもらったんだから」

ユエが女の負担を心配してきたものと思い、気を使うなと言った意味で安心させるように言い返した。だがユエはそうではなくて、と、その理由を話す。

「――なるほどね、誕生日だったの。そんな大事な日に、悪いことしたわねえ…」

「あ、いえ、それはいいんです!私が今日だということを知らなくって…」

そう言えば港に停まったときに船長が、今日は宴だと楽しそうに言っていたことを思い出した。他でもない、ソウシの誕生日の宴だったのだとようやく今理解する。考えてみると満月でもないし、何のための宴なのか聞いてみればよかったと、今更ながらに悔やまれた。

「そうねえ、夕飯はもうほとんど準備ができてしまったし…そうだ、何かデザートでも作りましょうか」

「いいんですか?」

「もちろん。何でもってわけにはいかないけれど、クッキーを焼くくらいの材料はあったはずよ」

にっこりそう言ってやると、セラはうれしそうに目を輝かせた。これでせめて、何かを贈ることだけはできる。これで十分だとは思わないが、その分あとで改めてプレゼントをすればよい。

「ありがとうございます!…その前に、夕食も手伝いますね」

「助かるわ。じゃあ、その鍋焦げないように、かき混ぜててもらえる?」

ユエはほっとして、おたまをつかむと女の指示に従って手伝いを始めた。



そんなに経たないうちに、もうほとんどやることがなくなった時、洗い物をしていた女性がふと思い出したように言った。

「そういえば、丘の上にある教会なんて見に行くのは、どう?」

「教会、ですか?」

先ほどぼんやり眺めていた時に、そう言えばそんなものもあった気がする、と思いながら、ユエは女に聞き返す。

「うちはこの通り、葡萄畑とワインしかないとこなんだけど、あそこの教会はいいよ」

そう言って女は、ある話を聞かせてくれた。するとユエの目が、好奇心に輝く。

「それ、面白そうですね!」

「町に比べれば、ささやかなもんだけどね。でもロマンチックだし、きっといい思い出になるよ。この分だと、日没まではあと持って一時間くらいだろうから、今のうち行っておいで。デザートは、明日もっと時間をかけて作ったらいいよ」

「ありがとうございます、ちょっと行ってきます!」






(ユエちゃん、何を作ってるんだろう)

目の前の男と話しながら、ダイニングに座るソウシは頭の片隅でそんなことを思った。今日が自分の誕生日だったと言うのは昨日思い出したのだが、まさかユエに告げていないとは思っていなかった。こういっては自惚れ以外の何ものでもないのだが、可愛い恋人がどんなことをしてくれるのかと、歳がいもなく楽しみにしていたりもした。しかし知らなかったのなら、用意のしようもない。もうじき今日が終わるというときになって、それを知らされた時の恋人の反応まで思い出したところで、ソウシは笑いそうになってしまうのを何とかこらえた。

(可愛かったなぁ)

こういってしまっては悪いが、可愛いものは可愛いのだからしょうがない。自分の誕生日のためにあそこまで焦る恋人を見て、うれしいものだと、ついつい頬が緩むのを隠せなかた。あの様子からして、そしてユエの性格からして本人はきっとものすごく落ち込んでいるのだろうと想像するが、まさかソウシが今こんなことを思っているなどとは夢にも思っていないだろう。

「先生、どうかしたんですか?」

「え?ああ、すみません、いいお話だなぁ、と思いまして」

わずかに表情にのぼったのが、男にもわかったらしかった。これがシリウス号でのことであったら、またやんやと外野に騒ぎたてられたことだろう。
そこに、たった今考えていたユエ本人が現れた。

「ソウシさん」

「ユエちやん。準備はもう終ったの?」

「はい。あと、あの…今から、行きたいところがあるんですけど…」

「え、今から?」

これは思っていなかったことを言われて、何だろうとソウシは思った。

「はい。丘にある教会に行きたいんです」







    
vigne


両側を葡萄畑に挟まれて、ゆっくりとした足取りで丘を登ってゆく。道はどこもゆるやかな勾配があり、小さく登り下りしながら教会に向けて歩いてゆく。
夕暮れの太陽が、二人を横から照らし出すように光を投げていた。畑にはみ出した影は細く長く、歩くのと同じ早さで隣をゆく。あたりは、なんとも切なくなるような黄金色の黄昏の空気に満ちていた。

「綺麗ですね」

「そうだね、」

目を細めて向こうを見るソウシの横顔をみて、ああ、綺麗だなとユエは思った。
深呼吸すると、嗅ぎ慣れた潮と磯の香りはなく、清涼な野山の濃い空気が肺いっぱいに満たされる。

「さっきは、なにを話していたんですか?」

思い出したように、尋ねてみた。ダイニングに入った時の楽しげなソウシの顔が思い出されてふと気になったのだが、まさか自分のことを考えていたとはユエは知る由もない。

「うん、ここの土地の昔話を聞いてたんだ」

「昔話、ですか?」

「そう、…ここの村は、先祖の代から細々と葡萄を育てて暮らしていて、歴史の表舞台に出るような村じゃないんだって」

頷きながら、ソウシの話を聞く。

「ある日、この国の一人の女性が王様のお子を身ごもったんだ。それ自体は珍しくもないんだけど、その時のお妃様がすごく嫉妬深くって」

「…何かあったんですか?」

「うん、庶子は跡継ぎにはなれないし、それに王様にはそんなことどうでもよかった。それよりも、女性や子供が生涯を穏やかにくらせるように、小さな村にかくまうことにしたんだって。数人の家来と一緒に。それが、この村なんだ。だからここの村の人は、自分たちを古の王族の子孫だと思ってるんだって」





ゆるい丘の上に着くと、横からオレンジの日を受ける小さな教会が、ぽつんと畑を見下ろすようにある。正面の観音開きの大扉は閉まっており、右の隅にある小さなドアから出入りをするようだった。

控えめにそっと押してみる。ぎし、と一度鳴って開いた扉から入ると、教会特有の、湿り気を帯びたひんやりとした空気と、石の香りに包まれた。外の光に慣れた目には、隅の方に闇がうずくまっているように見える。左右の壁には奥まで細長い窓が等間隔に続いていて、左側から暮色の光が鈍く差し込んでいる。

    
eglise



誰も人はおらず、ユエたちはゆっくりと窓を横切って、奥の祭壇の裏側へ向かった。コツコツという足音が小さく響く。

(海賊も教会にいくなんて,人が聞いたら驚くのかな…)

ぼんやりと、そんなことが思い浮かんだ。驚く、というよりは、追い出される気もする。
荒々しいイメージの強い海賊が、教会でしんみりと頭を垂れる姿ほど程遠いものはないように思えた。しかし実際には、常に死と隣り合わせの自分たちこそ、神の膝下に一番近いのではないかとユエは考える。
自分の国の宗教は違うし、同じ世界にこれだけの神が住んでいるのも、考えてみれば面白い話だと思った。しかしたとえ初めて行った地で見たこともない神殿を訪ねたとしても、そこには確かに人の生と死の温もりを感じた。

祭壇の後ろに着くと、奥の別棟に続くらしきドアが一つと、その左に壁に埋まるようにして小さな螺旋階段、対象に右にはコンフェッショナーレという人が入るくらいの箱状の告解室がある。ユエはそれに近寄り、中をのぞいてみた。

「ここに、何かあるのかい?」

意外そうに言うソウシに、

「はい、ここから入り口があるって聞いたんですけど…あ、開きました!この奥です」

心なしか、ユエの声に楽しげな色が混じるのを聞き、ソウシは微笑ましそうに目元を和ませた。
ユエは中にためらわず入り込んで行く。ソウシもあとに続いた。抜けた先は、左右に前後、両手でそれぞれ同時にさわれるくらいの小さな空間になっており、さらに小さな扉がある。が、今は扉は外されて、長方形の口を開けていた。

そこをくぐると、小さな明かり取りの窓が一つ天井付近にあるだけの、小部屋にでた。慎ましやかな祭壇があり、長さのバラバラな細いろうそくが何本も立てられている。
夕日では、小さな窓からの光では不十分だった。
先ほどよりも暗い部屋に目が慣れず、しばらくまたなければならなかった。しかし、次第に目が慣れてきたとき、ほぼ同時くらいに二人は感嘆のため息を漏らしていた。

「これは…」

部屋一面が、モザイク画になっていた。金色のベースが、わずかな光を受けて鈍く輝いている。しかし、押し付けがましい派手な印象はなかった。それは太陽の色であり、大地の色でもあった。それを背景に、さまざまなものが描かれているのは、一枚の絵巻物を見ているようである。

「さっき、ソウシさんがこの村に伝わる話を教えてくださったじゃないですか」

絵を見ながら、ユエが話し始める。

「その、女性のお墓が、ここらしいんです」

「彼女の?」

「はい。さっき奥さんから聞いたのですけれど…子供を産んで直ぐに亡くなった彼女を惜しんで、その時の王様がこっそりこの部屋を作ったらしいんです。故郷から遠く離れた地に眠る彼女が寂しがらないように、故郷の絵が描かれてるって言ってました」
ユエの説明を聞いて、改めてソウシは絵を見上げてみた。そしてそっとユエに寄り添うと、その肩に手を回す。

「何が描かれているんでしょう」

「何だろうね…不思議な模様がたくさんある。船は、あの世で彼女が自分の国と自由に行き来できるように描いたのかもしれないね。」

「…ソウシさん」

ゆっくりとソウシの名を呼ぶ。

「なんだい?」

「お誕生日、知らなくてすみません…。本当は、もっと何か違うものも用意したかったのですが、何も思いつかなくて。ここのことを聞いて、いいかなと思ったのですが…」

あんまり、男の人に見せて喜ぶ類のものではなかったかもしれない、と、連れて来てなんだが心の中で思った。確かに綺麗で見とれはしたが、今は自分のために来たわけではない。結局、今日のうちにちゃんとしたプレゼント用意できなかったな、と、残念でしょうがなかった。

「そんなことないよ」

ユエの思いを見透かしたように、ソウシが言った。

「すごく、良いものを見せてもらった。ここに来るまでの景色もすごくきれいだったし、それに私は、ユエちゃんが私のことを思って、こうして隣にいてくれるだけで、うれしいよ」

「ソウシさん」

こんなことを自然に言うものだから、いつものことでも毎回頬が熱くなる。特に今日は自分が喜ばせようと思ったのに、逆ではないか。そう考えかけて、でも、と続けて思い浮かんだのは。
ソウシのいうとおり、同じことなのかもしれない。自分が誕生日の時に、ソウシがこうして変わらず隣にいてくれることが、ユエにとっては一番嬉しいことなのは確かだ。どんな素晴らしいプレゼントをもらおうと、ソウシが隣にいなくては、始まらない。
――何も準備ができなかったことへの言い訳のような気もしたが、今はすとんと素直にその考えが胸に落ちた。たぶんそれは、相手がソウシだからなのだろう。ユエが内心残念に思っていることもきっとわかっていて、その上本心からそう言うことを言ってのけてしまうのだ。決して慰めのためだけの言葉ではない。

「ねえ、ユエちゃん」

「何でしょう?」

聞き返したが、ソウシの目がいたずらっぽそうに輝いて、ユエの目を見つめる。何かを期待するような視線だが、言葉にする気はないようだ。
何だろう、と考えた時、そういえばまだ大切な言葉を言っていないことに気がついた。

「ふふ」

自分より年上だが、ときどきこんな風にあまえたがりの子供のような顔も見せることに気付いたのは、いつだろう。可愛いと思ってしまうが、案外言うと気にするので、心の中にしまっておくことにする。

「ソウシさん、お誕生日おめでとうございます」

「…ありがとう」

どちらともなく、吸い寄せられるように唇が重なる。
夕日の光はほぼ消え、もうじき夜がくるのだろう。またたくようなロウソクの光に囲まれて、一人の女性のために造られた部屋の中で、何となくここが船に乗る自分たちに近い場所に感じられた。シリウスではないが、ここの部屋にも風がある。モザイクの壁画の中から、南国の風が吹いている。どこからか、千夜一夜物語の語り部が聞こえて来そうな気がした。

   


voilier






やっと書き終ったけれど、なんか微妙。
特に誕生日を祝う気はなかったのですが、読んでた本にパラティーナ礼拝堂が出てきていい話だったので、見に行きたくなってソウシさんと見に行きましたchapel*
ただし、この夢小説に出てきた昔話はでっち上げです(爆
しかも田舎の小さな教会ではなく、実際は中世シチリア王国の古都パレルモにあります(現イタリア)。
西ローマ帝国滅亡後東ローマ帝国、そしてイスラム勢力に支配されモスクができたり、キリスト教・ユダヤ教が共存したり。オーストリア領になったあとスペインに支配下になったりと、いそがしい国です。

本で読んだので、イスラムの香りのする教会ってどんなだろう、って夢を膨らませてみた結果、無駄に描写の多い話となりました。
これなに小説ですかね汗☆

駄文を読んでくださった方々、ありがとうございます。