セイレーンⅢ | 夜の羊の本棚

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ソーシャルゲーム”恋に落ちた海賊王” ”戦国LOVERS”の夢小説を書いています。

更新不定期。

小説らしい文章スタイルを目指しています。


本家にない設定が暴走してます、苦手な方はご注意ください!








セイレーンⅢ



それから、二月ほどがすぎた。最初の一カ月を宝を売って手に入れた金で、各地で宴会三昧に過ごしたリュウガたちは、貰った金がそろそろ尽きる―と言うのは主にリュウガだが―ということで、新たな宝を探しあてていた。それをどうするのか、一瞬迷ったリュウガだったが、とりあえずは今回も総帥に持って行くことにした。

港につくと、昼過ぎだった。船の中で既に昼食はとっていたため、すぐに各自自由行動となるが、結局みんなでぞろぞろと、街中まで一緒に歩いて行った。

「早く売っぱらって、さっさと出ようぜ。ここの港、あんまり面白い店がねーんだよな」

着いてそうそうにそう言うハヤテに、トワもそういえば、と返す。

「あ、僕も思いました。綺麗な剣はたくさんあるんですけど、質がイマイチですよね」

「ははっ、お前もわかってんじゃん。派手なだけで、マジでいいもんねーよな」

「きっと戦う必要がないから、質よりも美術的な価値を重視してるんじゃないかな」

二人の会話に、ソウシが加わる。

「どうやらこの町には、町人からなる軍がないようだ。だから日常的に、戦うための武器を求める人がいないんだろう」

「とことん、平和ボケした街だな」

シンが飽きれたように言った。

「ふふ、まあ、平和なのはいい事だよね。さ、それじゃあ私たちは向こうに行きましょうか、船長」

ちょうど、町の中央の広場についたところで、ソウシがリュウガをみた。ローランの館は、この長方形の広場を横断して、対角線向こうから右に伸びる一番大きな通りをいったとこにある、いかにも高級住宅街といったところにある。

「そうだな。ちゃちゃっと行ってくるか!」

「とその前に、服をなんとかしないといけないですね。、あの店で着替えてから行きましょう」

そう言ってソウシが、数メートル離れた仕立屋を示すと、リュウガはわかりやすくげんなりした顔をした。

「もう顔合わせは済んでるんだ、二度目は適当な服でいいんじゃねーか」

「ダメですよ、ほら、行きましょう」

そう言うとソウシは、あの服は首が詰まる、とか、靴が歩きにくい、などと訴える言葉など聞こえないように、にこにこと店に向かってリュウガを引きずって行った。

「…ソウシさん、なんだか楽しそうですね」

「何気に、船長より強いよな…」

あとで酒場で落ち合う事にして、リュウガたちを見送った一行は、その間に必要な食材、弾薬を買い揃え、出港に備えることにした。
しかし全員で取り掛かったので、あっという間に支度が終わり、シンとナギはもう船着場近くの酒場へ行くといい、ハヤテとトワは先ほど別れた中央の広場に戻ってきた。

「…何つーか…やる事ねえな…」

「あ、じゃあハヤテさん、船長たちの行った屋敷、見に行って見ませんか?」

退屈そうにあくびをするハヤテの横で、トワが提案した。

「屋敷?そんなん見てどうすんだよ」

「いえ、特にどうするわけじゃないですけど…でも、一国の王様よりお金持ちの人がどんな豪邸に住んでいるのか、気になりませんか?」

「別に。…けど、やることもねえしな。散歩ついでに、行ってみるか」

「はい!」

そうして二人は、リュウガたちの向かった方向へと行ってみることにした。





「おかしいな、まっすぐ行くだけって言ってたはずだよな…」

「…見当たりませんね」

通りに入ってまっすぐ行くと、しばらく行ったところに周りの家より明らかに大きな豪邸がある、ときいたのだが、それらしきものは全く見当たらなかった。しかしそれにしても、立派な構えの家が多い。全体的に明るいオレンジの屋根の家にが多く、壁はクリームとオレンジ、白と茶色など、これもおしゃれに配色されている。

二人がきょろきょろしながら歩いていると、前から男が歩いて来るのが見えた。
身なりの良さからも、きっとこの辺りに住む人だと思われる。

「あ、あの人に聞いて見ましょう」

「そうだな。ちょっとすんません!」

まだ距離があるうちに、ハヤテが大きな声で呼びかける。
話しかけられた男は、声に気づいてハヤテの顔をみるなり、みるみる不信そうな表情になった。

「…私に、何か?」

「この辺に、ローランってやつの館があるって聞いたんだけど、どの変にあるのか知ってるか?」

「…失礼ですが、あなた方はあのお方に何のご用でしょうか?」


ハヤテのとても丁寧とは言えない言葉遣いに、仏頂面で警戒心をますます強めて言う男性。ハヤテも、自分の態度がそうさせているとは思わず、それをみて不機嫌になる。

「何って別に―」

「あ、あの!実は、僕たちの連れが今その方の屋敷に呼ばれて行っていて待ち合わせなのですけど、道に迷ってしまったんです。ご存知ありませんか?」

「…それなら、ここの塀の向こうが、あのお方の屋敷だよ」

これ以上ハヤテに話させるのは良くないと、トワが重ねるように言い直し、何とか言い争いにならすにすんだ。
男性は顎をしゃくって横の塀を指しながら言い捨てるように言うと、さっさと行ってしまった。通り過ぎざまに、

「これだこら、よそ者は…」

などとぼやいているのが聞こえた。

「何だよ、感じ悪いやつ」

男との距離が十分に空くと、ハヤテが怒ったようにそう言った。

「もう、ハヤテさん。あんな態度で聞いたら、怪しまれるのも当然ですよ。だいたい、僕たちの格好も、あまりちゃんとしてませんし」

「…けど別に、怒らなくたっていいだろ。何か危害加えようとしたわけじゃねーし」

「…はあ」

言っても無駄だと思い、トワは説得するのを諦めた。ハヤテのぶっきらぼうなのか素であり、悪意からでないのは仲間内ではわかっているからいいものの、どうしてこういう場でもっと気をきかせられないのかと、毎回思わずにいられない。そうすれば、余計な波風も立てずにすむものを…

「っつーか、この塀の向こうって言ったよな。何にも見えねーんだけど、どんだけ広い庭なんだよ」

「本当ですね、これじゃ言われないと、全くわかりませんでしたね」

改めて、言われた塀を見てみる。
明るい茶色のレンガでできた壁はハヤテたちの胸元くらいの高さで、その上に柵が張り巡らされている。
内側には見事な藤の花が植えられていて、溢れだすように道に乗り出して柵沿いにずっと続いている。
それに沿って歩いて行くと、曲がり角を折れたところでわずかに花が切れてい箇所があり、屋敷の屋根がほんのすこし見えた。

「あれか?全然見えねー」

「きっと、すごい豪邸が中にあるんでしょうね」

「そうか?思ったより、敷地も小さそうだぞ」

「たしか、ここ以外に本宅が内陸にもあるんですよね。そっちはお城みたいに、もっと大きいそうですよ」

「……」

「……」

「暇だな」

「そうですね」

勝手なことをいいながら見物していたが、当たり前だが見つけてもやることなんてなかった。

「おれ、ちょっとこんなか入ってくるわ」

「ええっ、だめですよ、見つかったらどうするんですか!」

「大丈夫だって…よっ」

言うや否や、すでにハヤテは柵を掴み掛け声とともにレンガの上に上がっている。掴む手ををそのまま上方にずらし、体を持ち上げ、直後鉄柵を両足で蹴り上げるようにして勢いをつけると、バク転するように軽々と柵を越え、向こう側に着地する。

「ほら、楽勝だって!」

手の土を払いながら、無邪気にこんなことを言って喜んでいる。

「見つからないようにしてくださいよー…」

これで見つかりでもしたらことだと、見ているトワははらはらするばかりだが、下っ端のじぶんに止める力などもちろんない。

「おう、任せとけ!」

そうしてハヤテはガサガサと音を立てながら、奥へと行ってしまった。



(思ったより、広いな)

正面はこれだけで普通の家2軒分はありそうな広々とした庭になっており、屋敷は奥行きが長かった。塀の内側は外から見たとおり藤の花と、その下にも葉の生い茂る低木が植えてあって、姿を隠すのにちょうど良い。
裏手の方に抜けてみようと、屋敷を右手にまっすぐ奥に行って見ることにする。誰も人がいないようだったので、隠れず堂々と歩いている。見つかったら、その時は逃げればよいと高をくくっていた。

しばらく歩くと、後ろからガタガタという車輪の弾む音が聞こえてきた。どうやら、塀の向こうに馬車が走っているらしい。壁向こうからハヤテを追い越し、そして程なくして音は止まった。ちょうど、数メートル先左に見えていた柵状の扉の前に、その馬車が停まっているのが見えた。

(やべっ、隠れないと)

人の足音がしたので、こちらに気づく前に、木の影に入り隠れる。ハヤテがじっと息を殺していると、カチャカチャと鍵を回す音に続き、きーっと金属のきしむ音がした。そして入ってきた人物は、そのまま足早に館へと歩き去って行った。

(今のうちに、ここから出るか…)

もう十分だと、そっと、なるべく音を立てないように木立を抜け出て扉の向こうをみると、馬車は人ではなく荷物を運んできたようだった。荷台の上の四角い大きなものを、黒い布で覆っている。
誰もいないと思ったのだが、前方には御者が一人いた。ただし馬を見ながらぼんやりしている様子で、ハヤテが立てたかすかな葉の音には気づいていないようだった。

(…美術品を運んできたのか?)

ここの館の主は美術品狂いだと聞いているので、荷物の大きさからして、きっと彫刻のたぐいなのかもしれないと、ハヤテは思った。そっと戸から滑り出て荷馬車の真後ろに行くと、御者の死角になる。

(こんなにでかいんじゃ、盗めねーな…ちょっと見るくらい、いいよな)

手癖が悪いのは、海賊なのだからしょうがない。
布は四辺と何箇所かにある紐が荷台にあるフックに結び付けられているだけなので、簡単に取れた。ハヤテは、そのうちの一つをそっとほどくと、めくって中を覗いて見る。

(…ん?なんだ、この緑の派手な色…?)

めくった瞬間、鉄の檻のようなものがでてきて、中に緑のフサフサしたものが見える。よく見てみると、鳥の羽のように見えた。

(なんだ、これ)

興味本位でそっと触れてみると、なんとそれは動いた。

(!?)

そしてその次にハヤテの目に入ったのは、驚いたことに人の手だった。



また、中途半端に切ってしまった・・・^_^;
思ったより、字数がいってしまったので、ここで切ります。