恋海 シン夢 「あともう一言」 2 | 夜の羊の本棚

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ソーシャルゲーム”恋に落ちた海賊王” ”戦国LOVERS”の夢小説を書いています。

更新不定期。

小説らしい文章スタイルを目指しています。

※しばらくシンさんほとんど出てきません。すみません(´・ω・`)






そしてその夜。
予定通り、一同揃って例の馴染みの店に出向いた。

その店は、昼間は普通の宿屋兼居酒屋という、どこにでもある店構えなのだが、夜になると売春を兼業している女性に女給が変わる。必ずしも夜の客取りをしないといけないわけではないので、女性の方から強引に言いよってくることはない。というのも、この店は美人が多いと評判で、豪商など金に不自由のない者が多く集まる。客の羽振りが良く、それだけで店も多いに繁盛しているからだ。

足を踏み入れてみると、店内は思ったより広かった。客はたくさんいるようだがうるさすぎるということもない、落ち着いた店だ。人の話し声や厨房から響く音が混ざり、細かなざわめきとなって聞こえてくる。

入ってすぐに、名乗るより先にこちらに気付いた女性が話しかけてきた。

「リュウガ!久しぶりじゃないの、元気にしてた?」

「おう、今回は遅くなっちまったな。お前の方も元気そうで何よりだ!」

そう言ってリュウガの肩をたたいてくる、30そこそこと思われる女性と親しげに挨拶を交わす。

「もちろんよ。今日もゆっくりしていってね。席はこっちよ」

そう言っててきぱきと案内する女性に、セラはすごいなぁ、と思った。リュウガがどのくらいの頻度で来るのか知らないが、客の顔をしっかり覚えているようだ。きっとここでも、毎回リュウガたちは派手に飲んで食べるのだろう。

セラたちは良く使い込まれた木製の大きめのテーブルの席に、二手に分かれて落ち着いた。大きめと言っても、せいぜい6,7人で満席になるくらいの大きさだ。リュウガ・ソウシ・ハヤテと同じ席で、向かいのテーブルにはナギ・シン・トワが座った。セラはシンの隣に収まる。

飲み物を頼むと、オリーブやドライ・ソーセージなど、簡単につまめるものもすぐ一緒に運ばれてきた。
そして、客をもてなすための女性も席にやってくる。

「リュウガ!もう、しばらくぶりじゃないの、待ちくたびれたわ」

「てっきりどうにかなってしまったんじゃないかって、心配してたのよ」

「ガハハ、俺がそう簡単にくたばるわけないだろう!」

そう口々に言う女性に挟まれて、リュウガは上機嫌だ。
見るとソウシも、隣に来た女性と適度な距離で和やかに話している。こちらでトワが赤くなっているのは、早くも酔いが回ったのか、それとも隣の女性に身を乗り出すようにして顔をのぞきこまれているせいだろうか。
無口なナギは会話は少ないが、話している女性は楽しそうだ。
そして、シンはというと―――

「待ってたわ」

そう言って現れたのは、あの女性だ。今朝と同じく軽やかな足取りでこちらに来ると、シンのとなり、セラとは反対側に座った。

「ふふ、もしかしたら来るのをやめてしまうんじゃないかって思ってたんだけど・・・彼女さんと一緒に来たのね」

そう言ってセラの方を見て、にっこりとする。自分も女なのだが、やっぱりドキドキしてしまうセラだ。

「放っておくと、何をしでかすかわかったもんじゃないからな。見えないところで面倒事を起こされるのが迷惑なだけだ」

そんな風に言わなくたって・・・と思うが、口をつぐむ。朝に忠告された通り、ここでの情報収集を邪魔してしまっては申し訳がない。とりあえず自分は、極力黙っていようとここに来るときに決めたのだ。


「そんな言い方しなくたっていいじゃない、彼女さんが落ち込んじゃうわよ?」

「俺は本当のことしか言わない。・・・・最近は、何か変わったことはあるか?」

「いえ、・・・・いつもと何にも変わらないわよ。相変わらず、私はこの店で働いているし」

クスッと笑って答えると、いつの間にか2つ用意されていたカクテルを、一つをシンに、もう一つをセラに渡そうとする。
それをシンがさえぎった。

「こいつには酒はいらない。何かアルコールの入っていない飲み物を頼む」

「あら、お酒ダメだったのね。ちょっと待って・・・」

彼女が近くにいた別の給仕の女に何か頼むと、レモネードが運ばれてきた。アルコールは入っていないが、おしゃれなグラスでかわいい。
子供扱いされている気もするが、お酒は苦手なのでありがたく礼を言って受け取った。

だんだんとテーブル上の料理が充実してくる。ふとハヤテを見ると、彼だけは特に女性と話しもせず料理を黙々と平らげていた。そこだけいつもの光景に、少しホットする。
ジュースを飲みながら料理をつまみつつ、やることがないなと考えていた時、また別の女性がこちらにやってきた。

「シン!久しぶりじゃない!」

そして「ちょっと失礼、」などといいながらセラとシンの間に無理やり体を滑り込ませると、先にいたレナという女性とシンで3人、楽しそうに会話を始めてしまった。

(・・・・強引だなぁ・・・・何にもすることない・・・・)

邪魔するなと言われた手前、おとなしくなるがままに任せるしかない。それにどの道、セラには今来た女性を押しのけてシンの隣に行く度胸もなかった。

(楽しそうだなぁ、シンさん)

自分はシンの彼女だしいつも一緒にいるが、こんな風に会話が弾むことはないな、とふと思う。大切にしてくれていると思うし愛されているとも思う、けれど最近何の話をしたかと思いだそうとしても、何も思い出せなかったことに少しばかりのさみしさを感じる。たいていは、勉強を教えてもらったり、シンの仕事を見ていたりと、いつも一方的に与えられてばかりだ。一緒にいると落ち着くし安心できるのが、次第に恋心に変わっていったのかもしれないが、少しはシンの楽しめることもできるように、もう少し勉強した方がいいのだろうか。勉強すると言っても、何をどうしたらいいのかよくわからないが・・・・。

「おいセラ、これうまいぞ」

悶々としていた時、通路を挟んで向かいに座っていたハヤテが、テーブルに並んだ一皿を指してセラに勧めてきた。見ると、あれだけたくさんあった料理が既に半分は無くなっている。
ここにいても退屈なので、セラはハヤテの隣に移動することにした。先ほど割りこんできた女性の影になっているせいで、シンはそのことに気付かない。

「本当に?じゃあ私もすこし・・・・・・本当だ、おいしい!」

「だろ?」と得意げなハヤテに、

「すごいお店だね」

「そうか?普通だろ。って、セラはこんな店来るの初めてだったか」

「うん、私の働いていた居酒屋と全然違う」

そう言ってきょろきょろとあたりを見回す。

「おまえじゃ絶対、こんな店で働くのは無理だよな」

無神経にも笑顔でそんなこと言ってくるハヤテに、元気を取り戻しかけていたセラの心がまたもや沈み込む。確かに、シンの隣にいて似合う女性というのは、今彼の隣にいるような大人の女性なのかもしれない。自分でもそう感じているだけに、ハヤテの言葉が痛い。

「う・・・・、確かに、そうだけど・・・・・」

「そうそう、色気なんてからっきしだし!」

ここまで言いきったところで、ようやくハヤテはセラがひどく落ち込んでいることに気付いた。

「いやいや、冗談だって・・・・!」

「・・・・ううん、私もすごくそう思うもん・・・・」

「・・・・それにほら、セラだって良く見れば・・・・」

そう言ってセラをよく観察し始めるハヤテだが、思った以上に長所が見つからない。
自分の胸元や顔を観察しているハヤテの視線に、セラも情けなくなってくる。この店の女性と比べれば、自分なんて10人並の顔であることはセラもよく自覚しているが、こういうことに関して点で気のきかないハヤテがいきなりほめ言葉を思いつくはずもない。そもそも、比べる相手が悪いことに二人とも気がつかなかった。セラだって、妖艶とはいえないが可愛らしい顔をしているし、ソウシあたりならば、探さずともすぐにセラの長所を言えるであろう――――。

「っだーー、もう、いいんだよ、んなことは!シンがいいっつってんだから、いいんだろ!」

「そ、そうだよね!もう、こんなことくよくよ考えててもしょうがないよね!」

「そうそう!とりあえずセラ、お前も飲め!これなんか、ジュースみたいでうまいぞ」

ハヤテに勧められるまま、セラも少し酒を飲んでみる。せっかく来たのだし、自分だって楽しまなくてはもったいない、と思い直す。
わたされたオレンジジュースに赤をたしたようなカクテルは、甘くてアルコールをほとんど感じさせず、船の上で試しに船長に飲ませてもらったラム酒とは全く違う味がした。
町では居酒屋で働いていたため、よくあるカクテルの名前は一通り知っていたが、試しに飲んだことなど一度もなかった。こんな飲みやすい酒もあるのかと、意外な思いだった。

だんだんと慣れない店にいる緊張も解けて、楽しんでハヤテと酒や料理をつまみ始める余裕が出てきた。ハヤテやトワとなら他愛もない会話も難なく弾むのは、やはり歳が近いせいであろうか。
くだらないことでワイワイと話に花を咲かせていると、あっという間に時間が過ぎていった。そんな風にしてセラが3杯目のカクテルを飲んでいるとき、すっと自分の横に人が来たのが見えた。

「私も、こっちにお邪魔してもいいかしら?」

見てみると、シンが“レナ”と呼んでいた女性であった。






と、とりあえず予告していたので今日up(汗
中編、というか、完結まであと2回は更新しそうです。
一応確認したのですが、あとでまた修正入るかもしれません。

あとがきも、誰も待ってないと思いますが(笑)
あとで書きに来ますヽ(;´Д`)ノ





あとで書きに来ると言って、既に5日orz
読んでいたら、シンさん夢なのに後半全然出てこないことに今更気付きました。
次も、出番なさそう(汗

この時代の、居酒屋システムが良くわかりません。
レモネードはけっこう古くからあったみたいなので、きっとオレンジとかもプレッシングの生ジュースがあった気がする。
ドライ・ソーセージは、サラミみたいなものです。
サラミがドライソーセージの一種。

甘甘夢とか、書ける日来るのかなぁ( ̄_ ̄)遠い目