夏にはある程度光が差しているだろうか、
そんな淡い期待も虚しく、
あたりまえだった日常が戻ることはない。
むしろ常に『今』が1番悪いという日々の連続。
出かけることに抵抗や罪悪感を感じながらも、
心がどんどん弱っていくのもまた感じる。
贅沢なのかもしれない。
今は我慢なのかもしれない。
悩んで出した答えは5月と一緒だった。
一緒に登りたい人と、登れる時間。
夏の山肌の緑色。
雨上がりの済んでキリッとした碧空。
雨の残り香の山麓に触れる雲。
全てが眩しく目にうつる…。
すぐに帰ろうと思ったけれど、
1日が終わって、暮れていくのを眺めたかった。
そういう時間はここ1年半でも片手で数えられる程度だった。
薄暮れてスンとした美しい湖面の脇を通り、
少し下った先に突然広がった甲府の盆地。
夜の始まりにあわせて、まばらな光が街に灯る。
焼けた雲、浮かぶ月。
忘れないでおきたいと思った、
二度とこないこの夏の1日を。
日も暮れて暗い町を走り抜けて、
月明かりの空を仰いだ。
ここには少しだけ昔の日常がある。
住むであろう街の夜景を見下ろしながら、
番台のある銭湯に立ち寄った。
風呂あがりの肌にあたる夜風が、
とても心地よかった。
青空に浮かんだ北アルプスの山並みを眺めて、
来年はきっと沢山登ろう、
そのために、不安を受け入れる覚悟を決めたのだから、と思った。
ありがとう、
今の世界を粛々と一人で生きるを、
またちょっと頑張れそうです。