その八 ~E-1グランプリ大阪大会~ 前編 | The Stone Age プチロングラン公演記念                  森達行の『The Stone Age 今昔物語』

その八 ~E-1グランプリ大阪大会~ 前編

E-1グランプリ大阪大会決勝戦(2003年4月 近鉄小劇場)

仲が良くって、お互いを認め合っている分、時にはライバルになる時がある。

E-1グランプリ大阪大会決勝戦の

The Stone Ageと私(親戚のおっちゃん)がそうだった。





その前にE-1グランプリと何ぞな?って方のためにしばし説明を。

知ってる方は飛ばしてください。

早い話が小演劇界の全国大会で

勝敗は観客の投票によって、決まるシステム。

地方大会は北海道・東京・大阪・九州で行われた。

大阪からの主な参加劇団「鹿殺し」「糾~あざない~」「キリンバズウカ」

「仏団観音びらき」「売込隊ビーム」「P・カウンシル」「ントログリセリン」

「ザ・プラン9」そして「The Stone Age」などなど。


それらが東京での全国大会決勝(下北沢・本多劇場)への出場枠の2席を争う。

一次予選を勝ち抜いた10組が決勝を二組に分かれて実施され、

それぞれの優勝組が東京に行く。持ち時間は20分。


まずは一次予選(2002年12月 近鉄小劇場)

The Stone Ageは、『蔵』という作品を披露した。

「お仕置きで蔵の中に閉じ込められた丁稚が

そこを棲み家にしていた河童と天狗に助けられる」という物語。

音響はオープニングとエンディングの音楽のみなので、

主催者側にお願いし、私は不参加だった。

また私は仕事が忙しく、この舞台を観に行くことができなかった。

結果は、その組でThe Stone Ageはダントツの1位。観たかった。

その1ヶ月前に「The Stone Age」の弟劇団(と、勝手に私は呼んでいる)

「ントログリセリン」が予選を通った。これもダントツの1位。

その他、有力劇団も順当に駒を進め、

大阪決勝はレベルの高い戦いになると期待できた。

主催者側の思惑通りである。


The Stone Ageの決勝戦のネタは『師匠ーッ!』という落語家の物語。

音楽は、実際に三味線と鼓で生音を入れるので、今回も音響の出番なし。

グスンと思っていると鮒田氏から電話が。

「今日から稽古やるから遊びに来てや。」「行く行く!」

そして、私は制作なり細々とした事を手伝うつもりで家をでる。

練習場所に車を停めて、中に入ろうとしたときに携帯が。

相手は「ントログリセリン」のメンバー。以下その会話


ン 「森さん久しぶりです」

森 「元気か?一次予選、ダントツやったらしいな。大阪決勝、頑張れよ」

ン 「それなんですけどね、森さん音響をしてもらえませんか?」


何ですと!その瞬間、はっきり言って瞳孔が開きかけた。

目の前の建物の中にはThe Stone Ageのメンバーがいる。

The Stone Ageとントログリセリン。

この2劇団は決勝で同じ組になっていて、

一方が優勝すれば、もう一方が落ちる。

少し考えさせてくれと言って電話を切る。植え込みに持たれかけて、しばし黙考。そこに出演者の森世まゆみさんが稽古参加にやってきた。


森世 「どうしたん?こんなところで格好つけて。早く中に入ろうや」

この頃には考えは決まっていた、引き受けよう。建物の中は携帯が通じない。

森世さんに嫌な役を押し付けた。


森 「うん、練習場に遊びに来たんやけどな。

   いまントロから音響して欲しいと頼まれた。

   鮒田さんに後で電話するから、すまんと言っておいて」

中に入れない。これから闘う相手の手の内を見てはいけないし、

何より決心が揺らぐ。

簡単に、森世さんに事情を説明して建物を後に。

実は帰りの車の中でも悩んだ。引き返そうと思ったよ。


夜、鮒田氏に電話する決心がつかず、その前に森世さんに状況を聞いた。

森世さんが私のことを伝えた瞬間、練習場はシーンとしたそうだ。

鮒田氏も少なからずショックを受けていたらしい。


私は鮒田氏に電話した。

鮒 「そうか。負けへんで~」

森 「こっちこそ」

電話は短かった。それだけで充分だった。

そしてントロの樺島氏に電話を。


同じ組には「P・カウンシル」「仏団観音びらき」「キリンバズウカ」

「The Stone Age」がエントリーされていて、敵達はあまりにも大きい。

しかし、最有力はThe Stone Age。レベルの高さは知っている。

だからこそ、彼らに勝てば東京へのキップが手にはいる。

「絶対に優勝して、東京に行こう!」

私はントログリセリンの樺島君に電話で伝えた。


つづく


次回予告 

E-1大阪大会決勝戦

東京行きはどこの手に?!の巻