編集後記 | 森田稲子のブログ

編集後記

会員制寄稿誌「日本の森林を考える」シリーズ⑨第2号・通巻34号

発行を前に・・・

●林業界の世論形成者的存在の速水亨氏が始めて本誌に書下ろしの論文を投稿された。三重県の大規模林業家である速水氏の言動は、絶えず林業界の先をいっていた。中でも、日本で最初のFSC認証を自費で取得したことは高く評価されている。

●しかし、送られてきた原稿を読み通し、何事もポジティブな速水氏の論文とは思えず、私は驚愕した。「今まさに、私有経営は風前の灯である。火が消える前にその火に新しいエネルギーをつぎ込むリーダーが必要とされる。今を逃してはチャンスはもうないと思われる。」と書かれている。

●日本の林業はもうそこまで危うくなっているのか。一体、本誌会員が速水氏からこのような言葉を聞くことを予見していただろうか。本誌はこの秋にはシリーズ⑩に入る。初心に還って本誌のテーマ「林業の再生を求めて」を議論しなければならない。

●2番目に書かれた服部氏は、厚生労働省におられて、『緑の雇用事業』を担当されていた当時の今から6年前(シリーズ③・第4号通巻12号)に投稿されている。

●現在、服部氏は、シンガポールのAPEC事務局に勤務されている。シンガポールには、今僅か2,000haしか森林が残されていない。そこに世界中から専門化が集まり、森林対策に関する様々な国際的な取り組みが行なわれている。

●「森林ジャーナリスト」である田中氏の取材の力量にはいつも感心させられる。2,3時間の取材にテープレコーダーを使わず、それでいて夢中になってメモを取る訳でもなく、ノートに何やら走り書きをしている様に見える。だが出来上がると、話の筋やキーワードを殆ど外していない。

●今回の取材でも、川口さんのてらいの無い誠実な語り口がよく表現され、大工や工務店と施主との間に挟まる国産材神話みたいなものの真実が、次々に明らかにされていく。国産材よりデザインという話が出たとき、「この話、タブーだったんです。」と田中氏が呟いた。

●最後の小池氏の論文は、今、世界で繰り広げられている森林・木材資源を巡る動きを、『多国籍国際資本』をキーワードにして、ダイナミックに解説されている。

●森林・木材・環境をめぐっての大国の動きが、政治や経済との絡みで明確に浮き彫りにされてくると、果たして、日本の今後はどうなってしまうのか、恐ろしく不安になってくる。これは決してわたしひとりのことではないに違いない。   

(森田)