早稲田大学エクステンションセンターでの講義の3回目

げんだい建築考  
社会における建築の意味・価値を考える


【主な講義内容】
・「建築」と「言葉」 ― メディアとしての建築、建築のコミュニケーション機能
・「建築」と「かたち」 ― 世界共通の建築のカタチとは
・「建築」と「素材」 ― 木と土か石、現代では?
・「建築」と「歴史」 ― 社会的背景に影響をうけ、また影響を与える建築
・「建築」と「世界」 ― グローバル化に相反し、風土に合わせる建築の世界

第3回目の講義のレジュメを掲載しておきます。
次回の14日は休講です。28日に補講します。

今回は建築の「素材」についてですが、まず「素材」という考え方はどこからきているのでしょうか?
自然界にあるもの、出来後のすべては「素材」として存在はしていません。まず「素材」とは考え方、観念なのです。

「元素」という観念が洋の東西を問わず太古より思想哲学の中心的話題に位置してきましたが、
それは、森羅万象曖昧模糊と生々流転する「世界を分析」できれば、「元素に分ける」ことができて、「世界を記述できる」ようになる。

世界を記述出来るならば、
森羅万象曖昧模糊と生々流転する様を予測したり、「世界の再構成も可能になる。」ということにつながるわけです。

それが、科学(古い科学は現在では占いや迷信といわれますが)を生じる源泉ともなりました。

結果として「素材」の発見が新しい世界を生み出したといえるでしょう。

というわけで、建築と素材を改めて考えてみましょう。

「土」、「木」、「石」は自然にあるがままを物理加工して建築素材として使われるものです。

料理でいえば、刺身とかサラダのようなものです。

その後、この
「土」、「木」、「石」に加えて「火」「水」に相当する、熱処理や化学反応を用いて生まれた「人工素材」が登場しました。

しかしながら、その「人工素材」が一般化して100年程度しか経過していないのです。


人工素材は大量生産と流通と大量消費を前提としており、現代の建築素材、たとえばプラスターボード、ビニルクロス、サイディングといった最低廉価素材と思われているものも、プラント投資と社会インフラに支えられて始めて成り立つものです。




建物の構造強度と素材特性は密接な関係があります。
素材の特性に応じて、様々な建築が地産地消されてきました。

現代では、構造強度の「分析」によって、この素材の特性を半ば無視、むしろ無理を利かせることも可能になってきています。

といった内容でした。