ガンダム00がこうなったらいいなっていう希望と言うよりむしろ絶望しか待ってないから自家発電 | リュウセイグン

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なんか色々趣味について書いています。

長文多し。

 ガンダム00、マリナの歌エンドでもマシな作品にしてみせる企画。

 ダークナイト&ライブアライブ&Gロボ&魔界塔士SaGaの要素アリ。

 戦闘シーンは基本省き。メンドクセ。



二期・マリナ、設定の一部改変。

 地球統一連邦が誕生してから四年、マリナはシーリンと共に世界各国を旅していた。
 連邦はあれども、世界情勢は様々だ。
 豊かな国・貧しい国・好戦的な国・平和ボケした国・無秩序な国。
 その中でも更なる豊かさを求める戦い、貧しいが故の戦い。ひたすら憎しみ合い、相手を滅ぼそうとする戦い。
 小さな事でも人々に善意を、そして歌を施すマリナ。
 感謝される事もあれば、逆に罵声を投げつけられる事もある。
 時には賊に命を狙われる事も。身体と生命だけはシーリンが救っているものの、彼らにすら手持ちの金銭を渡して歌を聴かせるマリナ。
 しかし、アザディスタンに戻った彼女には更なる冷酷な現実が待っていた。
 祖国の滅亡である。
 崩れ落ちるマリナに、シーリンがある意味慰めの、ある意味無情な言葉を投げかける。
「貴女が居ても居なくても、どのみち滅びる国だったのよ。分かったでしょう? 貴女だけでは世界は変えられない」
 シーリンのつてを辿って、仕方なくカタロンに身を寄せるマリナ。
 そこでは沢山の戦災孤児たちが居た。彼らの面倒を見る傍ら、歌を教える。
 だがそんな日々は長く続かない。
(この辺から基本オリジナルの流れ)
 カタロンはクーデター派の生き残りと結託を謀るが失敗。
 クラウスとシーリンはイノベイター(リヴァイヴらへん?)に殺され、マリナも子供達共々捕らえられてしまう……



 刹那達はリボンズ達との最終決戦、みんながそれぞれの戦いをするなか、ダブルオーライザー(沙慈はルイスと共に戦線離脱?)はアリーを倒し、リボンズと相対する。
 リボンズのチートマシンに押される刹那。片腕を破壊され、窮地に陥る。
 勝者の余裕を見せつけるリボンズ。
「キミへの餞(はなむけ)に余興を用意してあげたよ」
 刹那に送られてきた映像、それは多数の兵士の中に捕らえられたマリナと子供達、そしてイノベイターだった。
 マリナは手錠を掛けられているだけだが、子供達は犬のように首輪を付けられ、鎖に繋がれている。
「ひどいことを……」
 歎くマリナ。
「フフ、何を言っているんだい? この子たちがここに繋がれているのは、他でもないキミのせいだよ。キミがくだらない歌を弘めようとしているから。ねぇ、そうだろう?」
 子供達に尋ねるイノベイター。その口はリボンズのそれと同調している。
「ち、違うよ……お姉ちゃんは……ウァァッ!」
 急に苦しみ出す子供。体が痙攣している。首輪から電流が流れているのだ。
「やめて!」
「苦しいねぇ、でもこんなに苦しいのは、全部お姉ちゃんのせいなんだよ? さ、みんなお姉ちゃんに恨みをぶつけるんだ。そうすれば楽になるかもしれないよ?」
 怯える子供達。だが、躊躇している間に子供達は次々と電撃に襲われる。
「やめてぇ!」
 あまりの後継に叫ぶマリナ。
「お……お前のせいだ!」
「そうだ、……お姉ちゃんが悪いんだ!」
「ふざけるな!」
 恐怖に駆られた子供達は、次第にマリナを罵倒し始める。
 拙い言葉を躊躇いながらもぶつけてくる姿は、逆にマリナの心を攻めるのには最も相応しかった。
「……ごめんなさい、ごめんなさい。……私のせいで」
「そうだ、思う存分後悔するが良いよ。そして見たまえ、人間の本質などこんなものなんだよ。自分が危うくなると、すぐに他人を責め立てる」

「い……言うとおりにしたよ。だから、助けて」
 子供達は懇願する。
「そうだな……楽にしてやろう」
 と、イノベイターは銃を取り出す。
 響く銃声。
「いやあぁぁぁぁっ!」



「リボンズ、貴様」
 刹那が怒りの眼差しを向ける。
「フフン、彼女の行動などボクらにとっては小石でしかない。しかし小石にしろ増長した者には制裁を与えなければならないからね」



「やめなさい、やめないと」
「なんだ? やめないと何だ? 言ってみなよ」
 笑いながらも撃ち続けるイノベイター。
「いいよ、その目、その目だ。上辺ではなんと言っても一時的な感情に支配され、簡単に怒りと憎しみに染まる。その目こそ人類の原罪そのもの、イノベイターに支配されなければ互いに滅ぼし合うしか能のない下等な生き物のサガなんだ」
 そう言いつつ、マリナに銃を握らせる。
「……?」
「やめないと……って言っただろ? それは、こういう事かい?」
 イノベイターはマリナの手ごと握りしめ、銃を自らの眉間に密着させる。



「こんな面白いものを独り占めにしておくのは勿体ないよね? ボクとしては人類全てに見せてあげたいんだ。彼らの業をね」
「まさか……」
 刹那は絶句する。
「そう、この映像、ヴェーダで世界中に配信してるよ。おおっと、今ボクを殺そうとしても、彼女自身が銃を撃ってしまえば何の意味も無い。分かるだろ? 彼女の歌は上っ面だけのバカみたいな代物となる。そしてマリナ自身も、結局は周りの兵士に撃たれて死んでしまうだろう……まぁ、どのみち即席イノベイターのキミ如きがボクに勝てるとも思えないけど」



 以前として銃を携えるマリナとイノベイター。
 もうイノベイターは、銃に手を触れてはいない。マリナ自身に撃たれる事が、彼の役目だった。
「どうした? 憎いだろうこのボクが。仲間を殺され、子供達にも否定された挙げ句、やはり殺された。その恨み、その憎しみ、今なら簡単に晴らせるよ。ほら、この指を少し動かすだけでいい。一瞬だ。ボクもすぐ死ぬし、キミも簡単に感情の捌け口を見つけられる」



 同時にリボンズは刹那へ話し掛ける。
「平和を歌う姫、人類の良心、それが自らの手で暴力と憎しみの連鎖を産み出す時、きっと人類は自らに絶望する。そこでボクの必要性は確固たるものとなるだろう。いいかい? これはガンダム一機でどうにかなる問題じゃない。君は今、無力なんだよ」
 歯ぎしりする刹那、彼にとって最も悔しかったのはリボンズの言葉が正鵠を射ていたからだ。彼はこの状況を静観するしかなかった。



「どうした、撃てよ、撃ってみろ!」
 長い沈黙。周りの兵士までもが固唾を呑んでいる。
 と、僅かな囁きが零れる。マリナの口から。

   なくす事が 拾うためなら

「あ?」
 イノベイターの耳に届かなかった訳ではない。理解が出来なかったのだ。

   別れるのは 出逢うため

 マリナの手が銃から放れ、地面に落ちる。

   「さようなら」の後にはきっと

「歌をやめろ……」

   「こんにちは」と出逢うんだ

「歌をやめろと言ってるんだ!」

 イノベイターの拳がマリナを捕らえる。華奢な体は、吹っ飛んで地面に叩き付けられた。

   緑色芝生に 寝ころんでいたい

 倒れながらも、すぐにまた声が響く。

「そうか、まだ分からないか」
 左手でマリナの襟首を掴み挙げ、右手が素早く動く。
 絶叫。
 マリナの目からは鮮血が流れ落ちていた。両目を潰されたのだ。
「もうお前は緑の芝生を見る事もない。お前が最後に見た光、それは子供達が貴様を呪詛しながら死んでいくあの姿だ!」
 勝ち誇って嗤うイノベイター。マリナを地面に叩き付ける。

   動物と一緒に ごろごろしたい

 地面に倒れ伏し、顔の周囲を深紅に染め上げながらも彼女は三度、歌い始める。

「このっ」
 また襟を掴み、今度は地面を引きずっていく。
 その先には、柱。
 イノベイターは驚異的な膂力でマリナを引き上げ、その掌を重ねて、太い杭を打ち込んだ。
 壮絶な叫びが辺りをつんざく。
 足の甲も同様に、杭に貫かれた。赤黒い血が流れ落ちる。
「どうだ、ここまでやれば、気色の悪い歌じゃなく、憎しみの呻きや怨嗟の声を響かせるか?」



 イノベイター、そして操るリボンズの口調がやや粗雑になっている事に気付いたのは刹那だけだった。



   今日は良い事がたくさんあったから

 遂にイノベイターが理性を失った。
「このっ、このっ! まだやるか! やめろ、やめるんだ! 薄気味悪い!」
 マリナの顔を殴り続ける。美しかった顔は腫れ上がり、変形して既に元の姿を止めていない。



「マリナ……」
 刹那の呟きも、取り乱したリボンズには届かない。



   うううう ううううう ううううううううう
   (明日も良い事がたくさんあるように)

 唸り。恐らく顎も砕かれたせいだろう、まともに音を出す事すら叶わない。
 それは既に言葉ではなかった。
 しかし同時に、歌以外の何物でもなかった。
「クソッ、黙れ! 黙れ!」
 またも殴ろうとするイノベイター。
 だが今度は、その後ろから唸りが聞こえる。
 イノベイターが振り向く。

   うううううう ううううううう ううううううううううう
   (お日様出て 夕日きれいで 星に願い明日が来る)

 兵士。
 周囲を取り巻く全ての兵士が、マリナと同じ旋律を口にする。
 いや、それだけではない。壁の向こう、市街地からも遠く深く、大きな響きが聞こえてきていた。

「何なんだ、お前らは一体何なんだ!?」
 そう、リボンズは知覚していた。放送を通して世界の人々が同じ唸りをあげているのを。

「あの人、確か山道で困っている時に……」

「町で食べ物分けて貰ったよ……」

「子供達がよく懐いていたわ……」

「この歌も、聞き覚えがある……」

「襲われてるのに歌聞かせようなんて、変わってるとは思ってたが、ここまで来れば見上げたもんだな……」

 マリナがずっと世界を見てきた、答えの一つがここにはあった。

   うううう うううう うううう うううう
   (どうして 行っちゃうの? 一緒に 帰ろう) 

「何故だ? 何故こうなる? ええい、放送を止めてやる!」
「それは出来ない。ヴェーダは僕が掌握した」
 その声は刹那ではなく、当然リボンズのものでもなかった。
「ティエリア・アーデ……」
 刹那が呟く。
「なん……だと……」
 リボンズは絶句した。
「刹那・F・セイエイ。僕に出来る事はここまでだ。後は……分かるな」
 頷く刹那。
「畜生、畜生! 人類はイオリアとボクの意向に従っていればそれでいいんだ、それが一番に決まっているんだ」
 刹那はリボンズをにらみ据える。
「それは違うな、リボンズ・アルマーク。イオリアの計画にも無かった、彼にも予想出来ない、それが人類の可能性、人間の心だ。イノベイターなどにならなくても、GNドライブによって繋がれなくても、人間は一つになれるんだ。平和を願い、憎しみを捨てる心さえあれば」
 ダブルオーライザーがGNソードの切っ先をリボンズに向けた。



「お前は、イノベイターは、それを無理に操ろうとして失敗した、ただの道化だ。あの中には入れない」
 刹那の目が、歌い続ける人々を映す。
 リボンズはしばらく沈黙を保っていたが、急に笑い出した。



「……ククク、それは傑作だね。じゃあ、キミも同じじゃないか。人類ではなくイノベイターとして覚醒したのだから、人類から爪弾きにされるって訳だ」
「その通りだ」

「なに……?」

 動揺させるはずの言葉を容易に肯定され、リボンズが戸惑う。
 ガンダムがGNソードを構え赤く染まった。トランザムだ。
 同時にGNドライブが∞の輪を描き、辺りの空間が白く光る。
「俺は、もう人類には戻れない。たとえ平和が訪れようとも。それこそ俺が犯してきた罪に科せられた、本当の罰だ」
 刹那は軽くうつむく。しかしその目は以前としてリボンズを見据えたまま。
「けれど……だからこそ! 平和を願う心、人類の心を守る為にこの手を汚せるんだ!」
 刹那が斬りかかる、リボンズの機体が放つGNフィールド。
「そうだ、それこそが…………ガンダムだ!!」
 歌と、平和を願う人類の心。それはダブルオーライザーの粒子放出量を増大させ続けていた。沙慈がルイスを救いたいと願った時のように。
 GNフィールドが切り裂かれ、ソードが叩き込まれる
「そ……そんなバカな、このボクが……」
 爆発。
「……状況終了」
 流石の刹那も疲労を隠しきれない。
「刹那、大丈夫?」
 通信から聞き覚えのある声が響く。スメラギだ。
 ボロボロになったプトレマイオスが、近付いてきた。



「全ては終わった。地球ももう大丈夫だろう、だからみんなは地上に帰ってくれ」
「刹那はどうするの?」
 スメラギの問い掛けに、刹那は自らの答えを告げた。
「知っているだろう。俺はもう人間ではない。平和の意志を守る為に戦う、平和を乱す存在だ。必要とされない時を願いつつも、戦い続けなければならない。だから人々の前から姿を消す」
「それは賛成出来ないな」
「ティエリア……」
「何故なら僕もまた、イノベイターだからだ。刹那、君を独りで行かせはしない」
「それなら僕もご一緒するよ。超兵もまた、戦いの為に産み出されたんだからね」
「アレルヤ……」
「私も、アレルヤと共に」
「ソーマ。いや、マリー……」
「やれやれ、みんな行くってんじゃ一人だけ抜け駆けも出来ないな。俺はイノベイターでも超兵でも無いが、もうアイツのような奴を見たくない。代わりくらいにはなれるだろ」
「ロックオン……」
「私も一緒に」
「俺も乗ったぜ」
「整備士がいなけりゃ始まらないな」
「オペレーターもですぅ」
「私も、戦いを起こさない為の戦術予報士として」
「みんな……」
「じゃあ、まずはCBの基地へ向かって解散伝えて、有志以外は地上に帰還するように言いましょう」
『了解』
 一同の声が唱和する。
 地球から遠ざかっていくプトレマイオス。

 大きなうねりの中心にいたマリナは、盲目となった眼で天を仰いだ。
 暗闇の中で、見覚えのある緑色の光が踊っている……気がした。
 自分が旅をしただけでは、歌っただけではこうはならなかった。彼女にはそんな確信があった。
 自らは決して暴力を振るわなかったが、それでも自分は何処かで守られていたのだ。シーリンに、そして彼に。
 人々もみな、空を見上げる。皆が、きっと同じ光が見ているのだ。
「あの光はきっと、人類の希望、純粋なる決意、そして平和への想い。そう、あれこそが……」

『ガンダム』
                                 〈了〉