我々外国人にとって、タイのビールといえば、何といってもシンハビールである。
私がタイで一番好きなビールも、やはりシンハ。
喉越しが良く、コクがあり、独特の旨味がある。 私は、日本でもサッポロの一番絞りや、サントリーのモルツなど、コク系ビールが好きなのだが、そんな私が飲んで美味いと思うタイのビールはシンハだけ。
そんなシンハビール。昨今の売上高ベースで見ると、もう全くタイを代表するビールではない、という事実をご存知だろうか?
偉そうに言ってしまったが、私も2日前までそんな事は知らなかった。
バンコク日本人商工会議所から毎月、所報なるものが送られてくるが、先日届いた2月号に「タイ及びアセアンのビール市場」という報告があり、そこに書いてあった統計によると、
2010年1月から10月度までのタイ国内ビール販売量では、我らがシンハの市場シェアは、驚きの僅か7%。
馴染みハイネケンやアサヒ等のプレミアムビールの合計が6%。
象さん印のチャンビールが27%。
栄光の1位は、レオビールで、なんと53%だ。
タイのビール市場は、もうダントツでレオなのである。
日本の方はレオビールをご存知無いかもしれないが、チーター(豹?)の絵がプリントされているエコノミービールだ。
元々、シンハの牙城を崩そうとしたタイベバレッジ社が市場に投入したのがチャンビール。爆発的に売れ始めたチャンビールの対抗馬としてブンロード社(ちなみに、タイでアサヒを製造しているのもここ)が出したエコノミービールが、このレオビールだったわけだ。
それが今では、レオビールが大大成功を収め、チャンビールを押しやると共に、兄貴分のシンハのシャアも食い散らかす結果となった。
シンハもレオも同じ会社の商品なので、ブンロード社からすればウハウハだろうが、私のようなシンハ新派にとって、このシャア分布は微妙。
勿論、レオはタイ国内販売のみで、国際的にはシンハブランドは不滅(であってほしい)なのだが、タイのビール市場動向が大きく変わってきている、という事だろう。
昔、タイではビールは割と高い酒だった。
一般人にとって酒といえば、メコンウイスキーに代表される質の悪い蒸留酒がメインだったのだが、豊かになるにつれビールの消費量が増加していき、ビールという酒が普及した。
そのうち、高いシンハやハイネケンだけでなく、安いビールを市場が欲しがり、それがチャンビール、レオビールの成功に繋がった。
早い話、普通の人間にとっては、「質より値段」。
これは日本でもそうだし、別に酒業界に限った話でもない。 電化製品でも食品でも、ある一定の質をキープ出来ているのであれば、値段が安い方に一般消費者は傾くのである。
ところで、そのレオビールの味だが、
私も何度か飲んだ事があるが、別に悪くはない。 それなりに飲めるが、やはりどこか物足りない、というか変な添加物のような味がする。 チャンビールに至っては、薬品臭い。 確かに、エコノミービールだけあって、シンハより2、3割は安いのだが、値段相応だと思う。
やはり、シンハビールは永遠に不滅です。