モンゴルに限らず、海外旅行先で地元の市場をのぞきたいものです。
私もタイの水上マーケットとか、香港の蚤の市、南米の露店などなど、雑踏好きの1人。
モンゴルでは、市場は「ザハ」といいます。元々の意味は「端っこ」。
言葉の意味どおり、10年ちょっと前は、ウランバートルの市場は、本当に街の端っこにありました。ごちゃごちゃとしてて、市場に入れば、物を売るのも買うのも自由。
自由市場は、昔は「ハルザハ」(黒い市場)と呼ばれてました。
売り物のほとんどが盗品。アンダーグラウンドな雰囲気が漂う怪しげな空間でした。
盗まれた電話線とか(電柱と電柱の間をつないでいる、あの電線です)、自動車のサイドミラーとか怪しげなものが一杯ありました。

今は売っているモノは基本的には「商品」として世に出ているモノ。
だけど、市場経済化が始まったばっかりの10年ほど前は、「泥棒市場」の名を欲しいままに!というくらいの盗品の山でした。
友達が「護身用にどうだ?女の子でもこれなら携帯にも便利だろ?」と薦めてくれたソレは、日本でもマル暴担当者が目をひん剥いて取り締まっていたあの「トカレフ」でした。トカレフ・・・拳銃です。
それが、確か$30でいいよ、って言われてました。

馬旅などでの野獣や密入国者との遭遇などに備えて、一応、自分でもライフルは扱えるようになっているけれど、都会でトカレフ?
コンクリートジャングルとはいっても、危ないじゃないか!

さすがに今はみかけなくなったけれど、もっともっとアンダーグラウンドなところで売ってるのかな?

さて、旅のデンジャラスはトカレフとかいう浮世離れしたものだけじゃない。
市場の中にいる人は、モノを売る人・モノを買う人だけではないことにご注意!
ウランバートルの市場はとにかく、売る人・買う人以外の第三コンテンツな人が異常に増殖しています。
それが、モノを盗む人

モノを盗む人のターゲットは、主に外国人です。
彼らはプロのチームです。
どんなに気をつけていても、一度狙われたら、どうやったら逃れられるのか・・・一瞬の気の緩みが命取りとなります。

被害にあっても基本的には警察では被害届を出しても、盗難証明書を作ってくれることはほとんどないし、手続きが異常に面倒なので(被害者をあきらめさせるためか?)、盗まれて困るものは市場には持って行ってはいけません。

例えば、パスポート。日本人のパスポートはどこの国でも高く売れるから、気をつけてくださいね。再発行は、警察に盗難証明を作ってもらえば、証明写真とパスポートの控えがあれば、一応、在留の日本大使館で手続きをしてくれることになっているけれど、ガイドブックに書いてあるほど、トントン拍子にはコトは進みませんよ。

市場歩きの基本心得は、
1:金目のものは持ち歩かないこと。
2:クレジットカードや財布は持たないこと。
3:ウェストポーチ・ディバッグなど、自分の身体の外側にチャックがあるものは、全部、抱きかかえること。
4:一人歩きは危険。ガイドさんや同行者と徒党を組んで歩きましょう。

やつらのテクニックは、
1:スリ。3人くらいのチームで、付きまといます。
 一瞬の隙をついて、脇をすり抜け、さっとブツを掠め取り、すばやくバトンリレーの要領でブツをチームで受け渡します。

2:ナイフ使用。後ろに忍び寄り、ウェストポーチやポケット、ディバッグなどを切り裂いて、中身を抜いていきます。

3:囲い込み。商品を見ているフリをしながら、ターゲットを囲い込み、スリを働きます。

4:強盗。これが一番危険です。これぞ!と思ったターゲットにどこまでもつきまとい、人気のないところやホテルの入り口などで一気に襲います。
 空港の出入り口、道端、アパートの入り口など、とにかくどこでどうなるか、わかりません。通話中の携帯電話をひったくられたりするケースもあります。外国人とわかったら、いきなり後ろからレンガで殴りつける、という荒業も。強盗による外国人の死人は出てないようですが、とにかくご注意!

さいとう・たかをの名作、ラーメン屋と床屋につきものの漫画「ゴルゴ13」のように、とにかく自分の半径2m以内に他人を寄せ付けないことが一番大事。

人ごみの中でも、慣れてくると、半径2mの結界を自分で作れるようになります。

私は、財布は安物。高額紙幣は、無造作にジーンズのポケットに突っ込んでいます。あとはお金を分散して持ち歩いています。自分でもどこにしまったのかわからなくなるくらいに・・・
あと、私の外見はとてもダサくてお金を持っていそうに見えないのかなぁ?

市場では、近づく人間がいたら、
「おめえ、うさんくさいんだよ」と思いっきり、疑いのマナザシでガンを飛ばします。
それでも平気で、周囲にまとわりついてきたら、こいつはホンモノ。スリ野朗です。さりげなく、しかし「気」を集中した肘をぶん回しけん制します。

時々、罪のない人?かも知れない人のミゾオチに肘を入れてしまうことがありますが、その時は、自分はまったく思いもかけなかったことをしてしもうた!とオオゲサに、モンゴル語で
「ヤァナアー!オーチラーライ。ター、ズゲール ビズデー」と謝罪します。
意味は、「きゃ!どうしよう。ごめんなさい。大丈夫ですか?」です。

お前の方がよっぽどデンジャラスだよ!といわれるかもしれないけれど、「危ない奴」と思われているくらいの方が、自分の身は守れるのかもしれません。

あと、やっぱりシェパードのソートンの存在は大きい。
犬を連れ歩くと悪い奴は近寄ってきません。

私は東南アジアでは、本当に無邪気にブラブラ、ジャランジャランと市場をふらつくのがすきなのですが、ウランバートルの市場はハードボイルド気分が似合います。

ハードボイルドな旅人。バイニン? 
アクション映画やサスペンス、冒険モノなどを好む人には、ぜひ行ってみて欲しい空間。
それが、ウランバートルのナラントールザハです。