銀行貸し出しの証券化という信用創造機能の停止 | 真理のある民主主義を目指す経済社会論

銀行貸し出しの証券化という信用創造機能の停止

終わらない信用収縮 インフレ懸念と絡む合う金融危機「第2幕」の闇
証券化という信用創造機能のエンジンは停止したままだ。実体経済への悪影響が出てくるのはむしろこれからになる。出典 香月康伸(みずほ証券チーフクレジットアナリスト)週刊エコノミスト2008.7.15


CMBS
CDO
出典 週刊エコノミスト2008.7.15


(自分のコメント)
ファニーメイやフェレディマックと言う住宅金融会社の破綻懸念がとりざたされ、いくつかの銀行破綻が起き、アメリカ経済の混乱が続いている。
その原因は、サブプライム問題を始めとした住宅バブルの崩壊によるものだ。

今回のバブル発生のメカニズムは

1銀行貸し出しが行われることによって、預金と言うマネーが作り出される(信用創造)
2その貸出先が、不動産部門や金融部門に大規模に行われ不動産や金融取引が急増し、住宅や証券バブルが発生する。

預金というマネーの創造は銀行貸し出しによって行われる。不動産業界の社長に銀行貸し出しが行われれば、不動産の社長は不動産の売買にその資金をあてるだろう。不動産の取引が銀行が貸し出した分増加し、不動産の価値が上昇する。
これがバブル発生のメカニズムであり、日本のバブルも、アメリカのバブルも同じ経緯で作り出された。
一言で言えば、銀行による不動産・金融部門への過剰な貸出しが原因でバブルが発生した。


今回、銀行の過剰な貸し出しの原因になったのは銀行貸し出しの証券化にある。

それまで銀行の貸し出しに対して、二つの規制が掛けられていた。
一つはBISによる自己資本比率の規制だ。
銀行は国内業務を営む場合は自己資本比率が4パーセント、国際業務は8パーセント無ければいけない。
この自己資本比率は貸し出しを行うと減少するようになっている。
そのため銀行は自己資本の範囲内でしか銀行貸し出しを行うことは出来ない。
もう一つは、融資先が返済しないことへのリスクだ。
そのため、銀行は健全な融資先を求める。

この二つの融資に対する規制が証券化すると無くなってしまう。
銀行が貸出金を債権化し、その債券をファニーメイやフレディマックのような住宅金融会社がCDOやCMBSのような証券化商品に加工する。その証券を投資家が購入し、金利の収入を得る。


貸し出しの証券化によって銀行は帳簿上の「貸し出し金」をなくすことができるようになった。
貸し出しを行っても、自己資本比率の減少に結びつかなくなり、過剰な貸出しが行えるようになった。
もう一つのリスクである融資先の焦げ付きも、証券化することによってリスクを投資家に移転することになり、銀行は貸し倒れリスクを負わないようになった。
それまでの銀行貸し出しへの規制が二つとも外れたことによって、銀行は過剰な貸し出しをこの8年間行い続けた。
その結果、巨大なマネーが金融市場に創造された。
銀行貸し出しの証券化という無尽蔵の信用創造機能が、住宅バブル崩壊によって、2007年以降激減している。特に問題なのは、証券化の激減がCDOのような住宅ローンの債務証券だけでなく、CMBSのような商業用不動産ローン担保証券にもおきていることだ。上記の図1、図2参照。

不動産バブル崩壊から始まる、銀行の破綻や自己資本比率の悪化は銀行の融資姿勢を厳格化し、実物経済への融資にも影響するだろう。
そうなれば、金融市場の混乱は実物経済へ波及し、企業は融資が受けられなくなり、倒産、失業、リストラが起き、典型的なバブル崩壊後のパターンが現れてくるだろう。
このまま不況が深刻化していけば、ドルの暴落を引き起こし、世界恐慌に発展さえしかねない状況だ。
政府や中央銀行が銀行の信用創造機能を回復させる抜本的な対策を行なわない間は、アメリカ経済の低迷は続くだろう。

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