西村賢太『寒灯』 | 本棚食堂

西村賢太『寒灯』

しばらくぶりの更新です。宜しくお願い致します。
毎月発売される文芸誌。以前は中年男性が買っているイメージを
持っていたのですが(愛読者の方、スイマセン!) 、最近は印象が変わってきました。
若い人にも楽しめる内容、企画が増えてきたな、という印象になりました。
今月発売された『新潮5月号』には付録CDが付いています。
谷崎潤一郎原作・主演(!)の初CD化『瘋癲老人日記』です。興味津々です。
このCD目的で初めて文芸誌を買いました。最初の作品は西村賢太『寒灯』。
西村賢太さん。「苦役列車」で芥川賞を受賞された西村さん。受賞後の記者会見は
印象的でした。私は受賞作はまだ未読です。

さて、この作品は色々な人の話を聞くと苦役列車と繋がる作品なのだそうです。
しかし苦役列車を未読の私でもしっかり楽しめる作品でした。
主人公は北町貫多。三十代半ばの十年ぶりに彼女が出来て舞い上がっている男性です。
六歳年下の彼女・秋恵。貫多は帰宅して用意されているカレーに幸せを感じます。
しかしこの貫多という男。まあー、飽きれくらい子供っぽい。
気にくわないと屁理屈ばかりで自分の意見が通るまで怒る怒る!
秋恵の表情が気に入らなければ、表情だけでなく料理の味にもケチを付ける。
最後は年越し蕎麦の味で大喧嘩です。

嫌いな人が作った料理。喧嘩して仲直り出来てない人が作った料理。
普段は美味しく食べていても、こういうときって何を出されても・・・美味しくない。
美味しくないというよりも、美味しく食べられないと言った方がいいかもしれない。

ご飯を食べるときの「気持ち」って思っているより重要ですね。
毎日楽しく食事をしたいものです。なかなか難しいですが。

この貫多という男性。典型的な「ダメ男」。自分勝手で短気。
しかし・・・
何か憎めないのは私だけでしょうか?私は少~しだけ愛おしく感じました。