スーツのポケットから、さっきしまった彼女の手の先が見えている。
これでいつでも彼女と一緒に居れる。
僕は帰ってそれをテレビの上に飾ろうと思った。
エレベーターが一階で止まり、僕はマンションの出口に向かった。
雨はもう上がったのか。
夜空を見上げてみると、空から何かが降ってきた。
それは凄い勢いで落下して来て、激しい音を立て僕の目の前のコンクリートの地面にめり込んだ。
さっき別れたばかりの、秋穂だった。
15階の自室のベランダを乗り越えて飛び降りたようだ。
身体はあらゆる方向に曲がり、関節の骨が肉を突き破って露わになり、脳みそが散らばっていた。
顔は潰れてぐちゃぐちゃになり、紅い肉片が所狭しと散乱している。
僕は彼女の顔を覗き込む。 もう半分諦めていたがやはりショックだった。
彼女の顔に、笑窪が見当たらないのだ。 もう一生あの笑窪に逢うことが出来ない・・・・・ そう思った瞬間、急に彼女への気持ちが冷めてしまった。 手がないのは何ともないが、笑窪がない彼女なんて何の魅力も感じない。
本当に目の前のこんなゴミみたいな女のどこが好きだったのか、今となってはもう思い出せない。
遠い過去のような気がする。 僕はスーツのポケットから千切れた彼女の手を取り出し、それを裂けて上唇のないグロテスクな彼女の口に押し込んだ。
僕はその血まみれのモニュメントに
“喉から手が出るほど欲しい”という題材をつけた。
前からこのマンションの住人と思われるOL風の女性が歩いて来て、この真紅に染まった芸術作品に気付いた時、膝と顎をガクガクと震わせながら雄叫びに近い悲鳴をあげ、その声は静かな住宅街に延々と響き渡った。
愛がなくなった今、身体が急に耐え難い倦怠感に襲われ、僕は肉のゴミに背を向け、マンションを後にした。 歩きながら、どうしても分からない事をずっと考え続けた。
どうして彼女は自ら命を絶ったのだろう? 僕には理解出来ない。
明日になれば、また僕と会えたのに・・・・・
ふと気が付くともう街中に出ており、目の前に焼肉屋があった。 腹には確かな空腹感。 ちょうど良い、僕が今一番食べたい物がここにはおいてある。
僕は迷わず中に入った。
店員に案内され席につく。 カタカナで“ワン”と書かれた名札を付けている色白の女性店員が、お世辞にもあまり上手いとは言えない日本語で
「オノミモノハ、ナニニシマスカ?」と訊いてきた。
ノドはカラカラだけど、どうしても早くアレを食べたい。
「うーんそうだな、まずその前に・・・・・」
秋穂の飛び散った脳ミソを見た瞬間、頭の中で連想されてどうしても早く食べたかったモノ。
僕はやっと口に出来ると思うと嬉しくて、満面の笑みで店員にこう告げた。
「ユッケを下さい」
終わり
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