♪は~るばる来たぜ、
『尾張温泉』~!!(←字余り)
名古屋の演歌ファンが集う聖地、
『尾張温泉東海センター』。
なぜなら、
毎週木曜日、ここで収録される東海ラジオの公開録音には、
毎回、演歌ファン垂涎の豪華ゲストが
登場するからであります♪
たとえば、
今月のラインナップは、こんな感じ。
う~む、今月はまた・・・
素晴らしすぎる!!
許されるものならば、毎週来たい。
そして、
本日のゲストは、【小桜 舞子】さんだ。
小桜さんは、
ぼくが初めてこの”尾張温泉”を訪れた時の、
思い出のゲストでもある。
そんな小桜さんに、
ふたたびこの地で相まみえようとは。
さあてと、
ではさっそく”歌謡ショー”を
・・・まあ、まてまて、あわてるな。
この時点で、午前9時半。
ショーは午後1時からだ。
早すぎる・・。
たはっ(^▽^;)
時間もあることだし、
まずは、ひとっ風呂浴びるか。
玄関からロビーを横切り、浴場へと向かう。
と、そのとき視界に入ってきたのは・・。
「ん?」
「ゲーセンかあ・・・。」
そのど真ん中の、目立つところに”デン!”と居座ってるのは・・。
「”UFOキャッチャー”だ♪」
懐かしさに、
ついフラフラと近づいてゆく。
若いころは、よくやったもんだ。
各地のゲーセンで景品をゲットしまくり、
”吊るし屋のヤモちゃん”と、恐れられたものさ。
(ウソウソ(^^ゞ)
うーん、なんか血が騒いできた。
ひさびさに、トライしてみるか。
そういえば昔、
親父とふたり、よく遊んだなあ。
持って帰ったところでおふくろに、
「邪魔やろ!!」
と一喝されるのは目に見えているのだが、
お互い競うように景品を袋詰めにして
意気揚々と帰宅したものだ。
まず、ケースの中を見渡す。
とくに、これといって欲しくなるような物はない。
だが、そんなことは問題ではない。
肝心なことは、”取れるか、取れないか!?”という、
その一点に尽きる。
獲物は、なんでもいい。
・・・そう、言ってみればこれは、
来客へ静かに叩きつけられた、
尾張温泉からの”挑戦状”なのだ。
ならばこの勝負ー、
受けて立つで
とはいえ、
こちらも何の思慮もなく、勝負に挑むわけではなかった。
もちろん、勝算があったからにほかならない。
まず第一に、
ここが”宿泊施設を兼ね備えた温泉”である、
ということだ。
つまり、
施設内にいる客は、かならずお金を払って入っている。
ただでさえ金払ってきてるのに、
ゲーセンごときで意にそぐわない散財をしたとしたら、
とうぜん、客は不機嫌になる。
ヘタしたら、
「こんな温泉、二度と来ねえ!!」
な~んてことになりかねない。
したがって、
施設側はそのあたりに配慮し、
各ゲーム機器の設定を”甘く”する。
必然的に、
クレーンゲームの”アーム”も強めに設定され、
その保持力も、かなり信頼度の高いものになるのだ。
第二に、
コイン投入口に目を落とすと、
『200円』とある。
「げ!!( ̄□ ̄;)」
と、二の足を踏むところだが、
過去のデータに照らし合わせてみれば、
100円よりも、200円のクレーンゲームのほうが、
景品取得率は高い。
これらのファクターから総合的に判断した結果、
使用金額1,000円以内で、景品をゲットする確率は、
じつに”97%”という、
驚異的な数字がはじき出された。
もはや戦わずして、勝利は我が手中にある。
「なあに、千円もいらないさ。
一発でキメてやるぜっ!!」
揺るぎなき確信のもと、薄い財布から百円玉を二枚取り出し、
投入口へと立て続けに叩き込んだ。
そして、クレーンを動かすわけだが、
ここでひとつ、懸念すべきことがあった。
それは、機械の”感度”だ。
クレーンは、ボタンを押している間動き続け、
離せば止まる。
だが、感度の悪い(メンテナンス不良)の機械だと、
ボタンを離してもすぐに止まらず、
大なり小なり”オーバーラン”してしまうのだ。
これは、少々やっかいな問題なのだが、
こればっかりは、やってみないとわからない。
見たところ、
いちおう本体の清掃はキッチリしてあるようで、綺麗な状態であるし、
ある程度は信用していいのではないか・・、
という結論に達した。
ならば、
あとは自分の”腕次第”、ということになる。
”標的”を定め、大きくうなずく。
呼吸を整える。
(←)ボタンを、黄金の人差し指が静かに押し込む。
”ウィーーーーン”
かすかなモーター音とともに、
クレーンが左方向へ、ゆっくりと動き出した。
((いい動きだ♪))
予想以上に、反応は良かった。
確かな手ごたえに、気分は上々だった。
((3,2,1・・・、ここだっ!!))
絶妙のタイミングで指を離すと、
じつに理想通りの位置に、クレーンは停止した。
「よし!」
さあ、
そしていよいよ、クレーンを”縦方向”に動かす。
いうまでもなく、
次に停止したときに勝負は決まる。
距離感が掴みづらい、むずかしい場面だが、
そこは百戦錬磨。
”達人”の手にかかれば、造作もない。
(↑)ボタンを押し、数秒後、
これまた絶妙のタイミングで指を離す。
「ふ。」
これ以上はないだろうという、
完璧な位置で止まった。
直後ー、
二本のアームが左右に広がり、
目標へとまっすぐに降下しはじめた。
「しゃあああっ!この勝負、もろたで!!」
早くも、ガッツ・ポーズが飛び出す。
頭の中にはもはや、
観念したように吊り下げられ、
落とし穴へと運ばれてゆく獲物の光景しか浮かばない。
「フ・・、フハハハハ!!」
まるでキッズ・アニメの、
主人公を追い詰めて勝ち誇る、敵キャラのように、
高笑いしたくなる気持ちを抑えきれない。
だがー。
「!!!」
予想だにしない結果だった。
頼もしく思えていた、シルバーのアームは、
ターゲットを捕えることなく、
すごすごと引き下がってゆく・・。
「・・・・・。」
現実は、時として残酷なものだ。
いくら認めたくなくても、
厳然たる事実がそこにある。
そしてー、
・・・・・(゜ρ゜)
プライドを見事に打ち砕かれ、
”抜け殻”と化した男。
折しも、季節は秋。
栗きんとんのおいしい季節となった。
しかし、
外は真夏のように、太陽がギラギラと照りつけ、
演歌の聖地を焦がしてゆく。
そしてまた、
温泉にもかかわらず、
ゲーセンにひとり立ち尽くす、場違いな男の壊れた心も、
”砂漠の水”のごとく、
急速に蒸発してゆくのだった・・。
何しに来た、ヤモメ!?
(つづく・・・)