シールドの方向性 | 雑感

シールドの方向性

昨今のシールドには「方向性」なるものが付加されてるものを多く見かけます。

楽器信号の流れる方向に合わせて、シールドをそのように製作するというものです。
巷では「セミバランス」と言われる製作方法です。


「セミバランス」とは何か?

音響の世界には「バランス接続」と「アンバランス接続」というものがあります。
「バランス接続」はHot/Cold/Groundの3接点、「アンバランス接続」はHot/Groundの2接点となります。
それぞれメリットがあるのですが、詳しいことは割愛。
マイクケーブルはバランス接続、楽器はアンバランス接続がほとんどです。
では、「セミバランス」とは?
マイクケーブル(2芯or4芯)を使用してシールドを製作する際に、楽器側「HotをTipに、Cold&GroundをSleeveに接続」、アンプ側「HotをTipに、ColdをSleeveに、Groundはどこにも接続しない」という、文に起こすとよく分からない接続方法です。


はたして、セミバランスは有効なのか?

実は、これがいまいちよくわかりません。
Hot信号というのは楽器の音声信号です。シールドは外来ノイズを受け止めてHot信号に到達しないように芯線を取り囲みます。で、受け止めたノイズを楽器やアンプに送り、アースや人体に落として音声信号に乗らないようにします。
「アンバランス接続」も「バランス接続」もこの原理は変わりません。
「セミバランス」はこのシールド線を楽器側にだけ接続して人体へのみアースさせるというのが目的のようです。
しかしながら、電気的にはCold線によりアンプ側へも繋がっています。
電気回路的にはアンバランス接続と何ら変わりないのです。
ところが、「音が変わる」という意見が多いのです。
自分も経験しています。
セミバランスで製作したシールドを使用して、楽器側とアンプ側を逆方向に繋ぐと明らかに音が変わる、という経験をしました。
ただ、問題は「必ずしも変わるわけではない」という点です。
良い悪いはこの際置いておきます(音の善し悪しは人それぞれなので)。
音が変わるのか変わらないのか?これは「場合による」としか言えませんし、セミバランスのせいかどうかも分かりません。
ケーブルそのものの構造にもよりますし、このケーブルだと変わるけどあのケーブルは変わらない、といったことも充分考えられます。
聞く人によっては音が悪くなる、ノイズが増えるといったことも考えられます。
不確定要素が多いのです。

もともと、プロの世界では「セミバランス」という言葉は存在しません。
ケーブルメーカーでも、そのように謳ったケーブルはありません。
主にシールドを製作するショップや個人製作の世界で広まった手法のようです。


AnchorSoundでも、正直この「セミバランス」には懐疑的です。
しかしながら、「セミバランスが欲しい」という需要があるのも事実です。
お客様の立場に近い存在でありたい、というのがAnchorShopの指針です。
そういった経緯から、AnchorSoundのショップでは「方向性あり・なし」を選択できるようになっています(1芯シールドを除く)。
あくまでも確実なシールドは「アンバランス接続」です。
この点を踏まえたうえでお買い物をお楽しみくださいますよう、お願いいたします。

http://www.anchorsound.com/