初めての旅から帰ってきた私は、休む間もなく時刻表を開き、インターネットで鉄道関係のホームページを片っ端から開き、次々と今後の旅の計画を立てていった。
次の旅に出かけたい、という衝動がどうしても抑えられない。
しばらくは長期休暇は無いため、日帰りの旅が中心になる。
となると、自ずと関東甲信越地方の旅が多くなる。
もし自家用車があれば、金曜日の夜中に出発して、東北や中部地方のお目当ての路線を乗ることも可能だろうが、今の私には自家用車が無い。
自家用車があったとしても、その作戦だとガソリン代や高速料金が大きな出費となってしまう。
旅の資金はなるべく最小限に抑えたいのだ。
初めての旅では、移動費は18きっぷとムーンライト信州の指定券だけに抑えられたが、宿泊費が予想より高くついてしまった。
金は無いが旅はしたい。
今後の一人旅は、貧乏な旅になるだろう。
宿泊が必要な旅は今後、駅寝も辞さない構えで臨まなければならない。
そして、なるべく鉄道に関する出費も抑えられればベターだ。
その為には18きっぷは最適なアイテムだが、使用できる期間が決まっている。
18きっぷの使用できない期間は、代用となるような切符を駆使しなければならない。
調べてみると、関東近郊のローカル私鉄は、フリー切符を扱う路線が割と多く存在する。
まずは関東近辺のローカル私鉄に乗りに行こう。
そこまでしてでも旅をしたい。
用事が無くても良い。旅をしたいと言うよりは、鉄道に乗りたい。
今の私の生きがいはそれしかないのだ。
鉄道の事が頭から離れると、また鬱に襲われそうだから…
2011年8月16日
お盆休みの最終日は、次の日から始まる仕事に備えて、自宅でゆっくり過ごすつもりだった。
でも前日から、自宅のエアコンの調子が悪い。冷房がまったく効かない。
エアコンの電源を入れても、風は吹いてくるが冷たくない。
室外機を見てみると、ピクリとも動いていない。
電気屋に聞いたところ、室外機のトラブルはエアコンにとって致命的らしい。
余儀なくエアコンの買い替えを行った。
しかし、エアコンが届くまでは1週間近くかかるとの事。
私の住む本庄市は、日本一暑い街「熊谷市」(2011年8月当時)に近い場所にあり、夏は毎年酷暑に襲われる。
このような環境で、冷房をかけずに1日自宅にこもることなんて自殺行為である。
冗談では済まされず、近年ではエアコンを使わないと屋内でも熱中症に襲われるケースもあるくらいだ。
ここで事前に予定していた計画を、前倒しで決行することにした。
高崎線下りの始発列車で本庄を脱出し、高崎へ向かう。
高崎で今回の旅の命となる切符を購入する。
「ぐんまワンデーパスSP」
これは夏の期間に行われた、群馬DC(ディスティネーション・キャンペーン)の一環として発売されたフリー切符である。
この切符で、群馬県内の全ての鉄道(一部栃木県内乗り入れ可能な路線も有る)が乗り放題になるという、かなり強力な切符である。
1枚1900円。
(注意:上記は2011年当時のもので、2012年の同切符は、乗り放題区間と値段が異なる)
この切符を使って、まずは初乗車となる両毛線の車両に乗り込む。
小山行きのその車両はおそらく107系ではなかったか?と思われる。
列車は出発するとまず、新前橋まで上越線と同じ線路の上を走る。
新前橋から先が、両毛線の正式な路線となり、単線となる。
次の前橋駅を出発すると複線になり、2つ先の駅、駒形からは再び単線になる。
高崎から約50分かけて、桐生駅に到着。ここで一旦下車する。
ここの発車メロディーを初めて聞いて、私は少し拍子抜けした。
突然祭囃子のような音楽が流れたためである。
桐生駅の発車メロディーは、ご当地メロディーとなる「八木節」が採用されている。
ここから、目的の路線に乗り込む。
国鉄時代は、「足尾線」と呼ばれていた路線である…