肺炎治療の経過が思わしくないため、先生からCT検査をすすめられた。
喀痰検査の結果、肺炎を起こしている菌は死んでいたため、点滴していた薬は効いていたらしい。
しかしながら、レントゲン写真で見る肺の状態がほとんどといっていいほど改善していない。
「CTを撮ってみれば、隠れている本当の病気がわかるはずだから」
そう先生は言ったが、もしかしたら先生はこのとき、そこに潜む病名をもうわかっていたのかもしれない。

その日、仕事が終わってからCT検査に向かった。
大きなリングの前に横たわり、電子音声の指示に従って息を吸い、止める。
リングがゆっくりとわたしの体の上を通過していく。
「画像をチェックしますので、そのまましばらくお待ちください」
操作室からそう言われ、リングに串刺しの状態で待つ。少しして白衣の女性にマスクをさせられた。
「マスクをしてお待ちください」
それからしばらく待った後で、医師らしき男性がわたしの頭上に現れ、
「結核の疑いが強いので、クリニックに連絡したところ、そのままもどしてください、とのことなので、画像を持ってクリニックに行ってください」
と言う。
結核?
このわたしが結核? 何かの間違いじゃないの?
わたしは「結核の疑い」の「疑い」という単語に一縷の望みを託しつつ、クリニックへの道を歩いた。

クリニックでは、とうに診療の時間は過ぎているのにドアを開けて待っていてくれた。
画像を確認すると、先生は「結核だねえ」と言った。
結核特有の空洞が、肺の中にいくつかできていた。
「結核って、確定ですか?」
それでもなお、聞いてみたが、画像の専門家がそう言うのだから間違いないだろうと先生は答えた。
いろんなことが瞬時に脳内に集まってきた。
仕事のこと、生活のこと、家賃のこと、収入のこと・・・。
そして、頭の中が真っ白になり、呆然となった。
その後先生は、入院先の病院を選んでくれて、紹介状を書き、連絡も取ってくれた。
時計を見ると、21時を回っていた。

なんでわたしが?
なんで結核なんかにならなくちゃいけないの?
ボロボロと泣きながら帰った。
その傍らで、「こんなとき、ほんとうに『なんでわたしが?』なんて思うもんなんだな」と冷静に自分を見ているもうひとりの自分がいた。









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