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時代の流れとともにニーズが多様化して、人件費の問題や衛生上の問題、さらには味を含めてあまり評判の良くなかった列車内の供食サービスは次から次へと廃止されていき、急行列車の半室食堂車は昭和50年代前半に全て営業を終了していました。廃止後も 「立山」 や 「アルプス」 などの列車に組み込まれていた車両もありましたが、それはMG (電動発電機) を搭載していたため、電源確保のために組み込まれていただけでした。そして特急列車もその手が押し寄せていき、まず583系 (581系含む) 使用の夜行特急列車から食堂の営業休止を始め、それからは編成の短縮化で食堂車は編成から外されるようになりました。57.11改正で特急 「白山」 の食堂車営業が復活をしますが、それもつかの間、60.3改正で廃止されてしまい、食堂車は編成から外されてしまいました。
 
そんな中、北陸本線の 「雷鳥」 は、数少ない食堂車営業をしていた昼行特急として孤軍奮闘していたのですが、航空機網の発達や北陸自動車道の開通 (昭和55年) で、飛行機と観光バスを使った旅行が主流となりつつあって列車は斜陽化の一途を辿っていました。これを憂いた国鉄大阪鉄道管理局は、昭和60年3月のダイヤ改正で 「雷鳥」 における輸送量の乖離を修正して、使用車両を485系に統一し、同時に編成の減車を行いました。そして 「雷鳥」 を含めた鉄道の利用客を呼び戻すべく、新たな鉄道旅を提案する車両を導入しました。それが和風電車 「だんらん」 です。
 
「和風電車」 と聞こえは良いのですが、早い話が客室を畳敷きにした 「お座敷電車」 で、畳敷きの車両は客車が先陣を切って登場していて、既に知名度はありましたが、電車を畳敷きにするのは今回が初めてだったりします。当然のことながら、新製するだけのお金はありませんので、改造で賄うことになるのですが、編成から外した食堂車を種車に使うことにしました。
外観は食堂車時代と変わりありませんが、定員増を図るため、厨房部分も一部客室としました。厨房部分の窓は全て埋めて、新たに1000mm弱の窓を新設、客室を拡大しました。この結果、座敷部分は畳14畳分となって、定員も28名となりました。通常使用時は畳2畳分を1ボックスとして扱い、仕切りを設けていました。
また、オープンカウンター式のビュッフェも設けました。種車が食堂車ですので、これを再利用しない手はないということになり、以前よりも厨房部分は狭くなったものの、簡単でありながら本格的な調理を可能にしました。このビュッフェは 「だんらん」 以外の利用者も使うことが出来ました。
 
この 「だんらん」 は、単独での使用は出来ず、あくまでグループ利用が大前提となります。最小4人から利用が出来たのですが、和風客車から疑問に思っていたのですが、何故畳敷きの車両なのに、グリーン車扱いなんでしょう? 民営化後に登場したカーペット敷きの車両は普通車扱いがあったのに、畳敷きでグリーン料金を取るなんざぁ、詐欺のようでなりませんでした。
 
「だんらん」 は9両改造されましたが、全てAU13が乗っかっている後期形のタイプが種車に選ばれました。
サシ481-54 (アオ) →サロ481-501 吹田工場
サシ481-55 (アオ) →サロ481-502 吹田工場
サシ481-69 (アオ) →サロ481-503 吹田工場
サシ481-70 (アオ) →サロ481-504 吹田工場
サシ481-71 (アオ) →サロ481-505 鷹取工場
サシ481-73 (ムコ) →サロ481-506 吹田工場
サシ481-74 (ムコ) →サロ481-507 鷹取工場
サシ481-81 (サワ) →サロ481-508 吹田工場
サシ481-82 (サワ) →サロ481-509 吹田工場
 
アオ:青森運転所 (現在のJR東日本青森車両センター)
ムコ:向日町運転所 (現在のJR西日本吹田総合車両所京都支所)
サワ:金沢運転所 (現在のJR西日本金沢総合車両所)
 
配置は全車向日町運転所 (大ムコ
この電車は、物珍しさも手伝って運行開始直後はある程度の人気を得るのですが、やはり和風車両は団体客あっての車両。隣の座敷が気になり出したり、あるいは仕切りで区画されたとしても、畳2畳分では圧迫感もあったりして、のんびりとした旅が出来なかったりしたのも事実だったようで、JRに引き継がれるものの、後に登場する 「スーパー雷鳥」 のラウンジつきグリーン車に再改造されてしまい、残ったのは編成から外されてそのまま廃車になってしまいました。ただ、この車両の功績としては、電車でも和風に仕立て上げることが出来るということが判り、 「だんらん」 登場の翌年には、急行用165系を改造した和風電車 「なのはな」 を登場させました。さらに今では、485系を改造した和風電車も登場しており、 「だんらん」 で培ったノウハウが生かされています。
 
【画像提供】
い様
【参考文献・引用】
鉄道ファン No.289 (交友社 刊)
復刻・増補 国鉄電車編成表 1985年版 (交通新聞社 刊)
キャンブックス 「国鉄・JR悲運の車両たち」 (JTBパブリッシング社 刊)