その1≪懲役20年を求刑される≫ | The Prison Chronicle ~リアルタイム刑務所日記~

その1≪懲役20年を求刑される≫

平成16年の初句、私は殺人及び殺人未遂の容疑で逮捕された。(正確には出頭した)

言うまでもなく私は人を殺したのだ。

原因は今思えば実にくだらないもので、ヤクザ者同士の偶発的なケンカから全ては始まった。(この事件をきっかけに私は組織から破門されてしまったので、今となっては素人同然〈?〉なのだが、事件当時は構成員だった)

事件の内容はというと、相手4人に対し私はその内の3人をナイフで刺し、1人は死亡、1人は重傷、1人は軽傷、そして残りは逃走という結果を招いた。ちなみに私も怪我を負ってしまい、片腕を30針程縫った。この事件に対する検察側の求刑が20年だったというわけだ。

私を取り調べてしていた刑事や弁護士はおそらく15年程度ではないかと予想していた為、私もてっきりそんなもんだろうとタカをくくっていたのだが、『いかに重い罪で起訴できるかが仕事だ』などと平気な顔をして言ってしまう検察側は、私に20年を求刑したのだ。

求刑される以前はほとんど意識することは無かったのだが、『20年』という数字で具体的に明示されることにより、刑の重さが初めて現実のものとなって私にのしかかってきたのだ。

裁判中は沢山の傍聴人が見ている手前、顔色を変えるわけにはいかなかったのだが、この時の私は、『20年』という刑の重圧をはっきりと感じていた。

今の世の中で平和に暮らしている若い人たちに聞いてみたいものだが、自分の人生の終わりについて意識してみたことはあるだろうか。

極端な話、『1年後にあなたは死んでしまいます』と突然知らされたら、死に前にまず何をするだろうか?

きっと幾つかの本当にやりたい事のみを選び出し、その中でも優先順位の上位のものから実行に移していこうと考えるのではないだろうか?

私はこの度、20年を求刑された直後に自分の死というものを生まれて初めて意識させられた。

それは何故かというと、この先獄中で20年も過ごしていたら、そのあいだに死んでしまうのではないか?

ということだ。

私以外の受刑者(特にロングの人)も、きっと一番嫌な事は獄中死ではないかと思われる。もし、そうなってしまえばこのまま二度と塀の外の世界を目にすることなく、GAME OVERとなる。リセットボタンなんて無いのが現実だ。

しかも、一度塀の中に入ってしまえば、そこには自分の力ではどうにもならない世界が拡がっていて、ひたすら刑の満了を待つのみとなる。

私の場合ちょっと気づくのが遅かった感は否めないのだが、生きて出所することが出来たら、残りの人生は自分に素直になって、本当にやりたい事を実現させる為だけに費やそうと心の底から思うことができた。(勿論良い意味で) 

要するに、他人に決められた未来の中で、一度の人生を終えるのは嫌だと気が付いたのだ。

若い時は(私はまだ20代だが)人生は無限に続くかの様な、根拠無き楽観が気持ちの中に存在しているが、それ故、後先考えずに行動してしまうものだ。だが、今回の私の様に、『人生は決して長いものではなく、一度きりで片道なのだ』と、いうことをはっきりと意識することが出来れば確実にくだらない事には手を出さなくなるだろう。これは、早いうちに気付けば気付くほど良いことだと言える。今、この瞬間にも一秒ずつ終わりは近づいて来ているのだから・・・・・。

と、まぁこんな事を求刑後から考えるようになり、今に至る訳である。いきなり最終話的な内容になってしまったので、自分でもちょっと困っているのだが、本来の目的は、刑務所初体験の私の視点から見た塀の内側の実状をリアルタイムで伝えたかったのである。

多くの人が決して触れることの無い、ごく身近に存在している現実の世界を。

現在の私は、某刑務所内にて生活している。

一体何年後の出所となるかは見当も付かないが、続けられる限りこのThe Prison Chronicleを続けていくつもりだ。

こんな感じで始まってしまったが、記念すべき第一話はこの辺で・・・

人気blogランキングへ ブログランキング ブログ村


★クリックお願いします★