みつまめの「このレコード聴いてみたビックリマーク
       「UNITED COVER」
               井上陽水


 古今東西あまり関係なく、みつまめのお気に入りレコードを披露している「このレコ!」、今回は邦楽フォーク&ニューミュージックから、井上陽水氏のアルバムです。

 1stから順を追って陽水氏の作品を取り上げていこうという大河企画、これで第24弾となります。


         「UNITED COVER」 (2001年5月30日発売)

           1.蛍の光 (スコットランド民謡)
           2.コーヒー・ルンバ (西田佐知子)
           3.花の首飾り (ザ・タイガース)
           4.旅人よ (加山雄三)
           5.銀座カンカン娘 (高峰秀子)
           6.サルビアの花 (早川義夫)
           7.東京ドドンパ娘 (渡辺マリ)
           8.ウナ・セラ・ディ東京 (ザ・ピーナッツ)
           9.嵐を呼ぶ男 (石原裕次郎)
           10.誰よりも君を愛す (松尾和子)
           11.ドミノ (ペギー葉山)
           12.星のフラメンコ (西郷輝彦)
           13.月の砂漠 (童謡)
           14.手引きのようなもの (井上陽水奥田民生)


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                    映画

 井上陽水氏、21世紀最初の作品は、本気モードのカヴァー・アルバム。

 それも、とても古い昭和20~40年代の歌謡曲から主に選曲したもので、長い時代の風雪を耐え抜いた筋金入りの名曲ばかり。

 原曲の主は括弧内に表示しましたが、いずれも昭和歌謡を代表するキャラクターの濃い伝説の歌手ばかり・・・こうした “誰もが知る曲” をカヴァーすることはリスクが大きいもの。

 いかに巧みにカヴァーしたところで、所詮は 「元歌の方がいいよねェ」 と言われるに決まっているからです。

 それでもこうした選曲を臆せず提示するあたり、陽水氏の “歌手” としての矜持というものでしょうか。

 カヴァー・アルバム 「UNITED COVER」 は2001年5月30日に発売されると、意外にもじわじわとセールスを伸ばし、アルバムチャート最高2位まで上昇、50万枚を越える実売をマークし、CD不況時代のトバ口に大健闘してみせました。

 “当代一級の歌手によるスタンダード・カヴァー” はここから洋邦問わず流行り、アメリカではロッド・スチュワート、邦楽では徳永英明さんが大ヒットを飛ばしています。
 
 こうしたスタンドードを聴くと、「昔の曲の方が出来が良い」 などと短絡的に思ってしまいがちですが、考えてみれば、玉石混交のオンタイムと違い、スタンダードは長年生き延びてきたのですから良い曲に決まってる(笑)。

 また、時折はこのように現代の歌手にカヴァーされて新しい生命を吹き込んでもらわないと、そのスタンダードもあっさりと忘れ去られていくもの、ということも事実です。





                     sunglasses

 アルバムは、いきなり 『蛍の光』 ではじまるというシュールさ・・・ふつうラストソングでは??(笑)。

 これは憶測ながら “20世紀に別れを告げる” ことを意図していると言われ、そこからはトントンとオールド歌謡の世界に誘います。

 シングルにもなった 『コーヒー・ルンバ』 はそのエキゾチックな曲世界が、昭和30年代にはきわめて異質だったという陽水氏気に入りの一曲で、レゲエ風アレンジがさらなる無国籍感を表現しています。

 『花の首飾り』 はザ・タイガース、トッポこと加橋かつみさんのリードボーカル曲・・・そういえば、今年の12月にとうとうフル・メンバーによるザ・タイガースの完全再結成が実現するそうで、非常に楽しみなことです。

 今作選曲中、最大に特筆すべきは、「早すぎた伝説のサイケデリック・ロックバンド」“ジャックス” の早川義夫さんが1969年に発表した唯一のソロ・アルバム 「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」 収録の 『サルビアの花』 が陽の目を見たことでしょう。
 原曲の素晴らしさに加え、陽水氏の底なしの実力を如何なく誇示したベストテイクです。

 『嵐を呼ぶ男』 では、間奏のセリフをラップ調で披露するところが非常にかっこいい。
 常に歌詞を音韻で解釈する陽水氏のケレン味発揮と言えましょう。

 ラスト、一見唐突に思える陽水民生ナンバーのセルフカヴァー・・・発売当時は謎で、曲数合わせくらいにしか思っていなかったのですが、後年になってから理由がわかりました。
 この曲・・・『手引きのようなもの』 に歌われる世界が、奇しくも陽水氏のカヴァーソングに対する “考えかた” を端的に表現したものであったからだったのです。たぶん(笑)。


 ♪ 道なりに 道なりに その道を造った人なりの
   逆らってはいけない 合わさってもならない
   体を左右に軽く揺らすとよい

   山なりに 山なりに 丸く高く弧を描くように
   高ぶってはいけない 冷めきってもならない
   どうか届けと つぶやき投げるとよい

   ああ なんだ 釣りをする時の手引きのつもりが
   ああ まるで 君といる時の私ではないか

   それなりに それなりに 大きな答えが出た時は
   考えてはいけない どだいムリなことだ
   すべて忘れてケモノになるだけ
   すべてを流して水になるしかない 
                 (『手引きのようなもの』)


 それでは最後に・・・「UNITED COVER」 から、やっぱりこれをお聴きいただきたい、『サルビアの花』 をご紹介します♪(管理人註:動画なし)