高齢者医療
下の記事が妙に印象に残ったのでコピペしました。これからの高齢化社会、ますます医療費の増大が懸念されていますが、無理やり生かす延命治療の意味をよく考えるべきだと思いました。
以下産経新聞から転載
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120229/bdy12022903030000-n1.htm
老いの現実(中)医師・作家 久坂部羊
■「死を支える医療」にかじを切れ
--より良い高齢者医療とは
久坂部 多くの家族はおじいさんやおばあさんに長く生きてほしいと願うのと同時に苦しまないでもらいたいと思う。しかし延命治療で長生きさせると苦しむし、尊厳も失う。体が死のうとしているのに無理やり引き留めるのですから。
--そうすると、どうすればいいのですか
久坂部 臨終を迎えようとしている患者を励ましたり、命を少しでも延ばそうとするのではなく、死が避けられなくなったとき、それを可能な限り望ましい形で迎えられるようにする。本人の苦痛や残される家族の悔いを少しでも減らす。「死を支える医療」です。
--それはどんな治療をするのですか
久坂部 鎮痛剤と鎮静剤、あとは医師の説明とアドバイスです。人工呼吸器を装着したり、抗生物質、ステロイド、強心剤などを多量投与したりしません。
--これだと医療費はかかりませんね
久坂部 はい。無駄な延命治療をしないので費用はあまりかからない。日本の国民医療費が36兆円を超えて問題になっています。なかでも死の直前の医療費が 大きな負担になっている。統計によって異なりますが、国民1人が一生に使う医療費の約半分が、死の直前2カ月に使われるという報告もある。
--家族や周囲は経験していないから死や老いがどういうものか分からない
久坂部 はい。だからこそ情報を提供して現実を、医療の影の部分を世の中に伝えなければならない。そう考え、嫌がられるようなことも積極的に発言している。そのひとつとして5年前に『日本人の死に時』(幻冬舎新書)を書いた。
--死を支える医療にはそれを実践できる専門医が必要でしょう
久坂部 治すことばかりを考えている医師には生かす医療から死なせる医療にハンドルを切る発想がない。適当な時期に快適に死ぬには、死の側に立つ専門医のサポートがいる。
--そうした医師は増えていますか
久坂部 在宅医療の開業医が多くなるなかで増えてきていると思う。ただ医療に携わる者は患者の死を是とするようなことを大っぴらにはしにくい。病気と闘う とか、医師は生を是とする教育を受けているからどうしても死を敗北と感じてしまう。それに「医者のくせに何を言う」とか、「患者を見捨てたのか」とか言わ れかねない。
--なるほど
久坂部 医学が進歩することで良くない生が生まれた。大病院のエリート医師は医学の進歩を信じてどんどん医療を進めていけばいいと考えるが、医療現場を知っている医師は引いた方がよいこともあると理解している。
--死をどう考えていますか
久坂部 私は死を全面否定しない。死は悲しいし、つらいし、苦しい。しかしそんな死にも良いところはある。そう考えることでバランスが取れると思う。
--高齢者の大半が病院にかかっていますが
久坂部 老人の病院通いは害が大きい。時間と労力、お金をかけて検査を重ねた結果、分かったのが治らないということだけだったりする。それなら何もしない 方が有意義だ。老化が原因の病気に対し、医療は限界がある。病院に行けば治るというのは幻想です。(論説委員 木村良一)