大福は気付いていたのかどうか知らないが


詰所で何となく見ていたもの


中高生向けなのか


Aの法則という番組



肝試しをすると、男女の仲が縮むとか

そんなのをテストすることをやっていた


そんな簡単にいくもんかな、そう思いながら顎を撫でていた


まあ


若い子なら、そうなるか、なんて



真っ暗の中で

何かが出てくると


「っきゃあああああ!」


って、抱きついたりしているが


・・・・・・・これ・・・やらせとかじゃ、ないのか?



「もおかえる、怖い・・・」


女子ってこんな簡単に泣くものなのか?



看護師は、気が強いからな・・・



なんて考えてたら


大福が声をかけてきて


今に至って



すこし

悪戯心が働いた訳で。



川沿いに出る道なんて他にもあるけど


わざと少し暗い通りを選んでみた



意外と黙ってついてくるから


そのまま歩き進めた



川に近いだけあって


少し風がひんやりしてきて

酔いの回った頬にはちょうどいい



ただ


何を話せばいいのか良くわからなくて


後ろを振り向かない代わりにゆっくりと歩いた




まあな


暗いって言ったって


ここには特別な仕掛けがあるわけじゃないからな


と、思っていたら




猫の鳴き声の後に


「ひゃああ!」



なんて、大福の金切り声が聞こえてきて



ぎゅうっとシャツの背中をつかまれて



「一止せんせ・・・」


泣きそうな細い声がする



え?


あ、え?


なんか、仕掛けあったのか?



「・・・・ど、うした?」



「あ、し・・・・・・」



「足?」


「なんかいます」



「なんか?」



下を見れば、迷惑そうに見上げる黄色い丸二つ


大福の足元に


猫。



「猫だ・・・、怖がらなくて良い」


「ふぇ?」



「ね、こ」


「猫?」


「そう」


しゃがんで追いやれば


とてとてと足音を立てて姿を消す



「・・・・・帰る」


「ん?」



頭の上で声がして



ころっとした雫が


自分の膝に落ちてきた



「やだ、怖い・・・・」



まさかここで彼女が泣くと思わず


自分で蒔いた種ながら



驚いてしまった


・・・・・



立ち上がって、自分が言った言葉と行動にも


驚いた



「・・・・・・・嫌じゃなければ」



彼女に向けて私は



手を差し出していた