パズドラの「ガンホー」が輝きをとり戻すために必要なこと | YAHOO!JAPANニュース

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ガンホー・オンライン・エンターテイメント <3765> という会社をご存じだろうか? 知らないとしても、スマホゲームの『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』を聞いたことがない人は少ないだろう。

ガンホーが配信したパズドラは空前の大ヒットとなった。スマホゲーム市場の存在感を高めるブロックバスター商品となり、株式市場でも投資家の注目を集めた。

今回は、そんなガンホーの歴史を振り返ってみよう。

ガンホーのIPO初値は公募価格の19倍

ガンホーは、1998年に米大手オークションサイトを運営するOnSale社とソフトバンクによる合弁会社「オンセール」として設立した。同社の初代社長に就任した孫泰蔵氏は、ソフトバンクの孫正義社長の弟でもある。

オンセールのオークション部門は「ヤフオク!」の牙城を崩すに至らず2002年に撤退、社名をガンホー・オンライン・エンターテイメントに変更する。同時に韓国のゲーム会社グラビティ社より『ラグナロクオンライン』の国内運営権を獲得し、オンラインゲーム運営事業へと転換する。

ガンホーの業績は、多人数同時参加型オンラインRPG『ラグナロク』のヒットで2004年には売上42億円、営業利益5億円に成長し、2005年3月9日には大証ヘラクレス市場(現在のJASDAQ)への上場を果たす。

ガンホーのIPOは多くの投資家に注目された。公募価格120万円に対し、初値は420万円で3.5倍。4月20日には2275万円の高値をつけ公募価格からは19.0倍、初値に比べても5.4倍という人気ぶりだった。

しかし、その熱狂的な人気も次第に冷めることとなる。同社の収益がラグナロクという「一つのゲーム」に依存していることがリスクと見られたほか、コンプガチャと呼ばれる課金システムがゲーム業界として問題視されたことが理由と見られる。株価も2012年5月15日には142万7000円(2005年に1株を5株に分割しており、上場時の1株換算で実質713万5000円)の安値をつけている。

ガンホーをIPO時に1株買っていれば「8650万円」に

ガンホーの業績が拡大し、株価がさらに買われるきっかけとなったのは2012年2月にリリースされた『パスドラ』である。

『パスドラ』はモンスターでパーティを編成しダンジョンへ潜入、パズルドロップを消す事で敵モンスターを攻撃しダンジョンをクリアするパズルRPGだ。ゲームは無料配信だが、戦闘に必要な魔法石などがアイテム課金となっている。

パズドラのメガヒットでガンホーの売上は2011年の96億円から、2012年には2.7倍の258億円、2013年にはさらに6.3倍の1630億円に急成長した。本業の利益を表す営業利益も2011年の11億円から、2012年には7.9倍の92億円、2013年には9.8倍の912億円と急増する。

『パスドラ』の登場で株価は2012年5月の安値から反発。業績の伸びとともに2013年5月14日には上場来最高値の163万3000円を記録する。ちなみに、この高値は後述する株式分割を踏まえると、上場時の1株換算で実質8165万円となる計算だ。

この時点でガンホーの時価総額はなんと1.5兆円に達し、一時は任天堂を抜き、時価総額で日本最大のゲーム会社になった。

パズドラの成熟で業績も伸び悩む

ガンホーの株価急騰の背景にはパズドラのヒットによる業績拡大はもちろん、資本政策も大きく寄与した。

2013年2月には好決算(2012年)とともに株式の10分割を発表。4月にはソフトバンクが、TOBでガンホーを持ち分法適用会社から連結子会社にした。同5月にもまた2013年第1四半期の好決算と10分割を発表している。

ちなみに、ガンホー株は2005年に1株を5株に分割しているほか、前述の通り2013年には10分割を2回、2014年にも100分割を実施している。上場時に1株購入し、保有し続けていた人は5万株の株主になっている計算だ。このような資本政策は、ITバブル時代の堀江貴文氏のライブドアと重なる。

しかし、ガンホーの業績は2014年をピークに伸び悩んでいる。パズドラの成熟による課金収入の減少が影響していると見られる。それにともない株価も下げトレンドを描いているのが現状だ。

ガンホーは、海外企業のスマホゲームを配信するパブリッシング事業に参入するなど、パズドラの減収を補う戦略を打ち出してはいるが、まだまだ埋めきるところまではいかない。

なお、2016年7月に同社はソフトバンクの連結対象から外れることになる。ソフトバンクグループは保有するガンホー株の約9割を、ガンホーが実施するTOBに応募した。ソフトバンクの保有比率は28.41%から3.80%に縮小し、ガンホーは持ち分法適用会社から外れることになった。ソフトバンクは、売却の理由等に関して正式なコメントはしていない。

ガンホーは割安といえるのか?

ガンホーの今上期(1〜6月)の決算では、売上25%減の614億円、営業利益は35%減の266億円と減速が続いている。同社は 今期の会社予想の業績を発表していない。予想ベースではないが前期実績ベースのPERは5.8倍だ。ガンホーは割安なのだろうか。

ゲーム業界大手の任天堂 <7974> のPERは93.3倍、同社のスマホ化で協業するディー・エヌ・エー <2432> は実績ベースのPERで47.7倍と売上ミックスの良い会社のPERは高めである。

一方で、ガンホーと同様に「一つのゲーム」に業績が左右さやすい企業のPERは低めである。『モンスト』のmixi <2121> のPERは5.4倍、『魔法使いと黒猫のウィズ』のコロプラ <3668> は10.6倍だ。

ガンホーの盛衰をみていると株式市場のダイナミズムが良く分かる。「一つのゲーム」のヒットで業績は好転し、株式市場は熱狂的な人気となるが、反動の冷え込みも大きい。かつてのパズドラのように、割安株から脱するためには新たなメガヒットが必要だろう。