パリのモスクとフランスにおけるイスラム世界 | penのフランス語日記

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「虎と小鳥のフランス日記」でフランス語を学習中のpenの日記。独学です。トリュフォーの映画を字幕なしで楽しむのが目標。フランス語とフランス全般の情報を楽しくご紹介。初心者むけの文法、語彙、ディクテなどの学習法、フランス映画、フレンチポップスの話題もあり。

こんにちは。penです。「今週の場所」はパリのモスク(Mosquée de Paris)をとりあげます。


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場所は、パリの5区。先週紹介した植物園のすぐそばです。
2 Place du Puits de l'Ermite, 75005 Paris, France

いつものように、ツーリストインフォメーションのサイトの短い説明を読み、ざっと訳します。

Mosquée construite (1922-26) dans le style hispano-mauresque et dominée par un minaret.

1922~1926年にイスパニアムーア(hispano-mauresque)スタイルで建設され、大きなミナレットがある。

hispano スペイン風の
mauresuque ムーア人の;マグレブの

このモスクは第一次世界大戦でフランス軍として戦って亡くなった北アフリカのフランス植民地の兵士の霊をなぐさめるために建てられました。Wikipediaによると、100,000人がドイツ軍と戦って戦死したそうです。

アルジェリア政府がお金を出していますので、建物もアルジェリア系のイスラム教の様式で建てられています(といっても違いなどは私にはわかりません)。

minaret ミナレット これはモスクで目立っている高い塔です。プチロワによると『祈りの時を告げるイスラム教寺院の高い塔』 パリのモスクのは33メートル。

photo:mosquée minaret by nicholaslaughlin


Dans une cour, des galeries entourent un jardin, symbole du paradis musulman. Au centre des bâtiments religieux se trouve un patio, inspiré de l'Alhambra de Grenade, entouré d'arcades finement sculptées.

緑に囲まれたギャラリーのある中庭はイスラム教の楽園を象徴している。宗教的な建物の中央には、きれいな彫刻がほどこされたアーチで囲まれているグラナダ(スペイン)のアルハンブラ宮殿を模した中庭がある。


この建物の中庭は入ってすぐは狭く思えるそうですが、中に進んでいくと植物や花がきれいに咲いている美しい庭がひろがります。入場料は3ユーロ。



La salle des prières retient particulièrement l'attention par sa décoration et ses magnifiques tapis.

礼拝する場所は特にすばらしい装飾と美しい敷物が目を引く。

retier l'attention 注目を引き出す→目をひく

Mosquée de Paris


これは建物の説明ですが、ほかにクスクス、タジン鍋を使った料理、甘いミントティーなどの北アフリカ料理が楽しめるレストラン、ミントティーとスイーツが食せるティーサロン、ハマームというサウナもあります。

photo:Dining room by Vainsang
レストラン

photo:Tearoom - DSCN7884 ep by Eric.Parker
ティーサロン

屋外にあるティーサロンはこんなふうに雀がたくさんいるらしい・・・え?

建物の回りを壁が囲っているので、街の真ん中でありながら、中に入ると静かで、庭などはとてもやすらげる場所のようです。

日本でいえば、お寺や神社ですから、まあ静かでしょう。

そんなわけで、観光客やパリのイスラム教徒でない人にとっては異国情緒が楽しめる場所ですが、イスラム教徒にとっては大切な祈りの場所です。と同時にここには神学校もあり、フランス政府が、近代的なフランス系イスラム教徒を教育するために利用したいと思っている場所でもあります。

今回の動画の解説で、自分の感覚では10人に一人はイスラム教徒あるいはイスラム教文化圏の出身者であると先生が言われていました。イスラム教はフランスで二番目に信仰の多い宗教です。

フランスになぜこんなにイスラム教徒が多いかというと、20世紀の始めに北アフリカに植民地を持っていたからです。マグレブ諸国と呼ばれるアルジェリア、チュニジア、モロッコ出身のイスラム教徒が特に多いです。

一番始めはフランス北部の炭鉱の労働力として、マグレブ諸国から移民が入植しました。戦後はルノー(自動車)の工場などでたくさんイスラムの人が働いていたようです。

私はフランスに住んでいないので、以下は想像で書きます。フランスにお住まいの方で私の認識が大きくはずれていたら、コメントをいただきたいと思います。

はじめにやってきた人たちは移民一世ですから、フランス人というよりたとえば、アルジェリア出身ならアルジェリア人です。しかし、二世、三世と進んでいき、フランスで生まれれば気持ちとしてはフランス人です。

photo:Paris Mosquée by Phil Beard


フランス政府は一応同化政策をとっているから、信仰には基本的に介入しませんので、学校ではふつうのフランス人、家ではイスラム教にのっとった生活をしてる人たちということになります。

高い教育を受けて入閣をはたしたイスラム系の人もいます。また織田先生が「地上の星」というビデオで、今フランスで一番読まれている文学はマグレブ出身の黒人作家による小説だとおっしゃっていました。

とはいえ大半は差別の対象で社会的弱者であるように思います。イスラム教にも国や地域によっていろんな宗派があり、穏健なものから過激なものがありますし、信仰の度合いも人によって違います。

しかし、9-11以降、すべてのイスラム教徒は過激派なのではと短絡的に見られてしまうことが多くなったのではないでしょうか。社会的に差別されていることが不満な若いイスラム教徒が過激派グループにリクルートされてしまうこともあります。

photo:Going to pray by Vainsang


2005年にイスラム教徒の暴動がありましたし、去年ブルカ(イスラム教の女の人がかぶってるベール)の着用を禁止する法律ができたときも論争が巻き起こりました。ブルカについては別の記事を書こうと思っていますが、フランスでブルカをかぶるイスラム教徒は少ないようです。また、本人はかぶりたくないのに、お父さんがうるさいからかぶるということもあるでしょう。

そもそもイスラム教の教えそのものが、私には、かなり極端なものに思えます。このように私にはよくわからないもろもろの社会問題が起きています。

フランス政府は、近代的な現代の事情にうまく適応できるようなイスラム教徒を教育したいと思っており、イスラム評議会と連携して、このモスクの神学校でもそういう線でイスラム教というものを教えているのではないかと思います。


■ 関連ビデオ
レストラン、中庭、学長の話など。
Mosquee de Paris.
4分21秒



こちらは完全にツーリストの視点から紹介したビデオ。英語
きれいな庭とティーサロンが見られます。
Paris: The Grande Mosquée And Inner Beauty
2分35秒





パリのモスクの公式サイト
Le site officiel de la Grande Mosquée de Paris




それでは、次回の「今週の場所」でお会いしましょう。今度は文字少なめにします・・・。