私がヲトメちゃんのカミングアウトに
衝撃を受けてから程なく。

職場では大変な事態になっていた。

ヲトメちゃんは仕事上ちょっとした
ミスをした。
回りの人から話を聞くに
私もやらかしそうなミスである。
そのミスをじゃがくんは厳しい口調で
叱責したというのだ。
三月から勤務時間も変わるのに
こんなことで平気なんすか?!
じゃがくんは熱くなるとかなりな勢いで
捲し立てるのだが
私はその時間帯にはその場にいなかった。
どの程度のテンションかも
他の人も捉え方がまちまちで
まあ、かなり強めにというアバウトな
ことしか聞き出せなかった。
普段から年上のパートさんたちに
口が悪すぎだという印象を皆持っていた
ところにこの叱責事件だ。
そしてその後、ヲトメちゃんは
思わず涙を流してしまうのである。

彼女とて不安だったのだ。
うちの現場は一日の流れで
時間帯が違うと仕事の内容も違ってくる。
ヲトメちゃんは今まで自分があまり
やりなれていない仕事も
飲み込めないまま臨む形になる。
そんなときにミスをして
愛しのじゃがくんに叱られた。
悲しくなってつい、泣いてしまった。


さて。

ここである1つの分かりやすい構図が
出来上がってしまったのだが
想像して頂きたい。

泣かした方と泣かされた方。

どんな経緯であろうが
大体の一般的な日本人というのは
泣かされた弱きものに味方をする。
泣かした方は四割増し五割増しで
ほぼ悪役決定である。
パートさんがすぐやめてしまう
この職場にあって、勤務時間を増やして
仕事を続けてくれるような人はもう
無条件で大事にしたいのだ。
私たちの現場のリーダー社員さんと
じゃがくんがかなり激しい言い争いをして
事態は最悪のものになってしまった。

もうパートさんとは
仕事のことも最低限しか話さない。

そんな捨て台詞とともに
じゃがくんは口を閉ざす。

あんなに仲の良かったじゃがくんと
ヲトメちゃんの間には長くて深い溝が
出来てしまったのである。

まあ、リーダー社員さんの反応も
もっともではある。
普段からじゃがくんは口が悪すぎた。
しばらくは私もじゃがくんに口をきいて
貰えなかった。それはいいとして。

やり過ぎたかなと落ち込む
リーダー社員さん(25歳男子)を慰め
ヲトメちゃんにはメールで
しばらく距離を置いて時間が解決
してくれるのを待とうね、と
焦らぬよう忠告した。
これだけでもかなり疲れたのだが
数日たつとじゃがくんが
ヲトメちゃん事件について
貝のように閉ざした口を
開き始めたのである。