遙かネットの昔話 「『裏伝言板』事件」(2) | 空飛ぶ栗鼠と星の海(跡地)

遙かネットの昔話 「『裏伝言板』事件」(2)

 どうにかこうにか受験が終わって、早速ネットに繋いで裏伝言板に行ってみる。するとなにやら不穏な空気が。投稿を遡って見てみると、発端はまったく知らない人間からの書き込みからでした。投稿者名は「す~ぎ~」。本文の細かい内容は忘れてしまったけど、名前だけは今でもはっきり覚えています。
「あなたは軽い気持ちで書いているのかもしれないが、その行為によって多くの人に誤解を与え、また迷惑を被っている人もいるということを、どのように認識しておられるのか」
 彼の発言に対し、N先生も一通りの反論を見せます。ここはコア読者のための場所で、こうした発言もある程度なら許可されているのだと。しかし、その書き込みの直後、まるで何かを察したかのように、発言を翻してこう書き込んだのでした。
「誰に見られているか分からない場所でこういう発言をすることを咎めているわけですね。
 じゃ、ここのカキコやめます。
 見てる人にあらぬ誤解を受けさせてはいけませんからね」
 その発言を最後に、N先生は裏伝言板から姿を消しました。わたしが見たときには、その書き込みは既に2週間以上前のものになっていました。完全に、手遅れでした。
 N先生がいなくなった裏伝言板に、わたしは居座り続けました。それはある種での意地でもあったし、もしかしたらN先生が戻ってくるんじゃないかという淡い期待も僅かながら包含していました。毎日書き込むことはなくなったけど、暇さえあれば人気のない伝言板を訪れ、独り言ともつかない発言を残していきました(たまにはJ氏もつき合ってくれましたが)。その結果、この場所には「誰かが棲んでいる」というミステリースポットのような噂が広まってしまったわけですが(笑) わたしの裏伝言板通いは、J氏がサイトを閉鎖するまで続きました。

 とまァ、これだけならよくある掲示板上でのトラブルに過ぎないんですが、ひとつ、気にかかる点がありまして。というのは、それから数年後に、某所でとある「噂」を耳にしたんですね。
 それは、今はなきエニックス系サイトの管理人と、エニックスの編集者との「関係」。その編集者というのが、今は既にエニックスを去り、別の……いや、これ以上言うと特定されそうなのでやめときます。とりあえずコードネームとして「工兵」と仮称しておこうか。ちなみにサイト管理人のほうは、当時エニ系サイトの中心的存在だった、あの方です。
 まァ、普通に聞いただけでは突拍子ない話です。どうせガセネタだろうと思います。でも、わたしはそう思えなかった。なぜなら「工兵」と、裏伝言板でN先生を追い出したあの投稿者との間に、ひとつの「関連性」を見出したからです。あの時期にそうやってエニ系のサイトを見ていたのであれば、あの書き込みも――。
 いや、所詮は邪推に過ぎないんですけどね。大体もしホントにあの書き込みが彼だったとしても、それがどうしたという話だし。編集者がネットやってちゃ駄目なのかというわけでもない。そもそもわたしにしたって、ギャグ王の編集者とメールしてたのだから。でも、関係者がそれとは知らせずに自分(の会社)に不利な発言をやめさせて、それにこちらがまったく気づきもしなかったというのが、なんだか気持ち悪いし、悔しい。実際のところは当人以外には判らないだろうし、おそらく今後も解明されることはないでしょう。けど、たとえ遠い昔にあった些細な出来事だとしても、その当時のわたしにしてみれば大きな「事件」であったのだということを、「す~ぎ~」さんには知っておいてもらいたいと思います。


※この昔話はフィクションです。登場する人物に心当たりがあっても、決して本人に問い合わせたりしないように。