思いついたので、今日も書いてみました。
〈クジラの彼〉冬原と夏木の会話です。
『発作(冬原)』 の続きなかんじです。
よろしかったらどうぞ。
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浮上した艦の甲板で。
「・・・うん、うん・・・聡子、愛してるからね」冬原が甘く囁いたところでぶつりと切れた。やはり通話状態が悪い。
「・・・業務時とは別人だなぁ」夏木がケータイを閉じながらニヤニヤ言った。
「そう?」すまし顔で答えてケータイを閉じる。
「前から思ってたけど、お前・・・よくそんなセリフ言えるな」尊敬するわ! と両手を合わせて冬原を拝む。
「そんなセリフって?」とぼけて聞き返す。
「はああ? だから、あれだ、その、ああああぃ・・・言えねえわっっ」やっぱりキレる。
「ああ、『アイシテル?』 夏木も言ってみれば? でも、気持ち悪がられちゃうかもね」平然と言った。
「だーかーら、言えるわけねえだろ! そりゃ俺が言ったらキモい・・・というか、お前は日本男子か!」勘弁してくれ・・・とヒラヒラ手を振る。
「日本人です。スミマセンねえ」
「まったくだ!」
何とはなしに眺めた空は優しい青だ。
「・・・・・・俺だってね、言えない言葉ぐらいあるんだよ」そっぽ向いてポソリと呟いた。
「ん? 何か言ったか?」首を捻る。
「いいや・・・なんにも」ニッコリと微笑んで見せた。
「・・・そうか」不思議そうな顔をする。
「で、望ちゃんはなんて?」はぐらかすように話題を変えた。
「ああ・・・なんか、結論から言うとだな・・・アイツ、合コン行くんだとさっ」不満げに言い捨てる。
「へえ! それはまた今回は・・・なんて言ったらいいか・・・」ついつい苦笑。
「・・・どんな嫌がらせだ・・・」ガックリ項垂れた。
「うーん、言ってるだけで実際は行かないんでしょ」思わずフォローを入れる。
「・・・たぶんな・・・行かねえとは思う・・・ (行かれたらマジで泣くわ)」
「ちゃんと『行くな!』って返信した? (それぐらいは言えるでしょ?)」
「・・・・・・ (それが言えたら苦労してねえ)」
「・・・ほら、今すぐ返しなよ (メールでも書けないの?)」
「いや・・・ (お前、そんな簡単に言うな)」
「休憩時間終わっちゃうよ? (ほらほらほら)」
「・・・お、おう (いやだから急かすなっ)」
「じゃあ、俺、先に戻るから (あんたのそういうところ嫌いじゃないよ)」
「・・・ああ (すまん、冬・・・)」
「・・・ふふ。可愛いねえ、望ちゃん」背中を向けたまま言った。
「何ヶ月も根に持つなっての! (俺が悪かった俺が悪かったよ認めますゴメンナサイ)」
「・・・愛されてるね、夏木 (夏木に夢中なんだねえ、よかったねえ)」
「・・・/// (いやだからそんなこと軽々しく言うなっての)」わずかに頬を染めながらケータイと睨めっこ。
もちろん、夏木の「行くな!」も「アイシテル」だ。
冬原の場合は「アイタイ」の代わりに「アイシテル」なのだろう。
END
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ちょっとだけ続けてみましたが、この先はとりあえずありません。
読んでくれてありがとうございました。