興味がある方は読んでやって下さい。

『クジラの彼』冬原と聡子です。



(2013/05/14 『発作(冬原)』 書いてみました)

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「こら! ハル! ぬいぐるみがつぶれちゃうよ」


読みかけの雑誌を放り投げソファから身を乗り出し、彼の腕をグイと引っ張る。


「いやいや、実際これくらいじゃびくともしないよ。頑丈なんだよねー」


ハルはまだポスポスぬいぐるみをなぶっている。


「それは潜水艦のコトでしょ! これはクジラのぬいぐるみ!」


彼の手からクジラを取り上げる。



三つある中でも、これがイチバン気に入ってるのに・・・。




クジラ =(イコール) 潜水艦 


あたしたちには当然のこと。


『潜水艦ってクジラに似てない?』 それが二人の馴れ初めだから。




「ほら、聡子、この子、『ハルくんかまって』って言ってるよ」


あたしの膝のクジラに耳を当て、うんうん頷いている。


「・・・もう、だから、息するようにウソ吐かないの!」


そう言うと、ハルはクジラごと、私を抱きしめた。


いくらクジラ越しとはいえ、彼氏の顔が突然おなかにくっつくのってどうなのよ?



やっぱりちょっと恥ずかしいんですけど・・・。



ハルはこういうことを自然にやってしまう。


まあ、これがありがたい時もあるんだけどね。



「それにしても・・・」


顔を埋めたまま、ハルはポツリと言った。


「・・・・・・時間が経つのが早い」



・・・あ。



「・・・うん、そうだね」


明日からまた、彼は(長期)航海に出る。




・・・ハル。


ハルは、潜水艦乗りなんだから・・・。ちゃんと分かってるよ。・・・ちゃんと。



「・・・待ってるから」


「うん、待ってて・・・待っててくんなきゃ絶対イヤだ」



・・・ハル、好きよ。



軽く頭を撫でる。


ハルは前よりずっと素直になったと思う。



あたしのクジラ乗りさん、すてきなクジラ乗りさん、どうか無事に帰ってきて。


必ず待ってるから。ずーっと待ってるから。


この日常が大切なの。


ハルのいるこの日常が大切なの。





「・・・あのね、ハル」


「・・・うん」




あたしも素直になるから・・・だから・・・ねえ、ハル・・・。



「あのっ・・・」

「聡子、結婚しようか?」


え?!


ビックリして目を白黒させてると、ハルが顔を上げた。


「ああ、ついに言っちゃったよ」


そう呟いて、あたしを見上げたハル。


彼はすごく嬉しそうに笑っていた。



あれ?


ちょっと待って・・・。


そんな大事なセリフをあんたはこんな体勢で言うかな?




あたしはそれに気づくのに、何分もかかってしまった。






END

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10:40 加筆


(難しかったです・・・)ボンのことがあった後、というかザリガニ事件(『海の底』)の後、冬原(ハル)は前よりも素直に言いたいことを言ってるかな~と思ったのです。ついでにプロポースさせてみました。

ちなみに私は『有能な彼女』の夏木さんと望ちゃんが好きです。そして、『クジラの彼』の二次をどんどん書くことは、やっぱりないなぁと思います。通常、どんどんってこと自体がないのですが・・・。