映画/「総会屋錦城 勝負師とその娘」 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道

1959年11月10日公開
大映
監督:島耕二
出演:志村喬、叶順子、轟夕起子、片山明彦、山本礼三郎、柳栄二郎

引退した大物総会屋内藤錦城(志村喬)とその娘(叶順子)の確執を軸に、娘のために総会屋として命を賭けた最後の大仕事に臨む錦城の姿を描く。
原作は城山三郎の直木賞受賞作。脚色は井手雅人。

島耕二監督は、戦前に私の大好きな「風の又三郎」を撮った名監督。
戦後も大映で多くの作品を撮っていますが、あまり評判を聞かない。
この作品も、CSの志村喬特集で放映され、不覚にも聞いたことのないタイトルだったので録画しました。
そしたらこれが…ビックリマーク
まず、島耕二監督の語り口が素晴らしい。
物語はどちらかというと、異色のホームドラマといった感がありますが、この家庭の描写、人の出入りの捌き方が見事です。
そしてやはり子供の使い方がうまいビックリマーク
錦城と孫がラジオ体操するシーンなんかいいですねぇニコニコ

神戸の芦屋に嫁いだ娘の美和子が実家に帰ってきます。
川開きの席で、離婚するつもりであることを母親(轟夕起子)にこっそり明かすシーンが良く、花火に華やぐ明るい宴席と、母娘密談の暗い別室が同じ画面に納められ、明暗の対比が素晴らしい。
別室の丸窓の障子の使い方など、思わず唸ってしまいます。
また、孫と後楽園遊園地に行くシークエンスで、錦城が孫とジェットコースターに乗りますが、ここから浮沈の多い彼の人生の回想になるのもうまい。
文字通りジェットコースター人生です。

そして志村喬ビックリマーク
威厳と気迫を持ってタイトル・ロールを演じて素晴らしいです。
総会の席での迫力ある言動、病床で妻に初めて自らの出自を語る長いカットの一人芝居、総会が無事に終わった宴席で妻の三味線を伴奏に語る浪曲、どれも破格の人間の人生の断面を演じ切っています。

脇では軽薄でいかにも戦後派の総会屋泉を演じた多々良純が強く印象に残ります。イヤな人物に見えて、錦城の浪曲に最後まで付き合うのが、いい。
錦城のライバル扇山を演じた山本礼三郎は、出番は少ないですが、存在感抜群です。

撮影の小原譲治は戦前のハリウッドからキャリアのある人で、この作品のモノクロの陰影や、ワイドスクリーンでのパン・フォーカスは特筆すべきです。

これは志村喬の、「生きる」に匹敵する代表作ですビックリマーク
ソフトは一切ありませんが、機会があれば是非ご覧下さい!!