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「この後悔は墓まで持って行く」…と父が突然一言。

父は自分が母の辛さをもっと理解していれば、せめてあと一年は寿命を延ばせた…と思っているようで。


私は…。


父のその言葉を聞いた時にふと思いました…。


私が持っていくのは「あの姿」かな…。


誰も知らない「あの姿」



あの日。
10月29日。


鮮明に憶えています


私のランドセルには鈴が付いていて、母はいつも私が帰って来るのを扉を開ける前に気付いてくれるのです。


土曜日のお昼。

玄関を入って一番に目に入ったのは、朝慌てていて半分しか食べれなかった大好きなさつまいものパン

嬉しくて急いで靴を脱いで部屋に上がって…


いつもと同じようなそんななんでもないことを今でも鮮明に憶えているのは…



その後すぐに
いつもと違う母を見つけたから。


最初はやけに母が細く見えて。

後ろ姿だったから。

母が人形を作って驚かしているのかと思いました。


でも…。


髪の毛の一本一本まであまりにもリアルで。

それが人形ではないと気づくのにそんなに時間はかからなかった。



人間って。
本当にびっくりすると。
声が出ないのですね。


「お母さん!」って


何度も。
何度も呼んだけど。


声が出なかった。
涙は出ても声は出なかった。



でも。



精一杯、叫んだ。



廊下の奥から
「びっくりした?」…って。

はにかんだ笑顔の母が出てきてくれるのを信じて大声で叫んだ。



もう18年も前のこと。


私の勝手な解釈ですが
母は私を「選んだ」のだと思っています


「あの姿」を見せるのは私だけ。



もちろん。
父も兄も。
病院で対面したけど。

病院での姿と
家での姿は違うから。

男の人って弱いから…

きっと私を「選んだ」のだと思っています。



『お母さん。

こんなに大きくなったよ☆

お母さんより、背が高いんだよ。

もう少しで、お母さんがお父さんと出逢った年齢になるんだよ。


不思議でしょ?(^^)


お母さんは私が結婚するまでは絶対生きる!っていつも言ってたよね

手作りのベールとブーケを作ってくれるって言ってたよね


強く育ち過ぎた私は、まだまだ結婚するつもりは無いけど(^^;



でも、絶対!
幸せな花嫁になるよ☆
そして、絶対!
幸せな母親になる☆


お母さんとしたかったことはたくさんあるけど。

一番したかったのは…
私の子供を見せること。


心配性のお母さんはきっと大騒ぎだよね(^^)

お兄ちゃんの時みたいに初めて生えた髪の毛を全部剃っちゃって。
おばあちゃんにまた怒られたりして(*^^*)


…おばあちゃんの家で、光男おじさんやしげおじさんやみんなで過ごす賑やかな時間が目に浮かぶよ。


でも。

おばあちゃんの家は無くなっちゃったし…

おばあちゃんも…
光男おじさんも…
しげおじさんも…


みんなお母さんのところに行っちゃった。



一つだけ。

お願いがあるんだ。



どうか。
どんなに淋しくても…
どんなに恋しくても…


お父さんを側に呼ぶのだけは待って。


私にはまだまだお父さんが必要だよ。
一緒にいたい。


欲張りな私が、
「願い事を一つだけ」と言われたら迷わない。

『私の子供をお父さんに見せたい!』
これだけはどうしても叶えたい!!


だから。
お父さんとの再会は
もうしばらく待って。

あと5年は子供を産まないつもりだから(*^.^*)
お父さんの健康を守ってね。


お墓参りの度に同じこと言ってるから、もう聞き飽きた?



なんでかな。
今日は急にこんなセンチメンタルな…。

昨夜、ちょびっと、体調悪かったからかな。

具合悪くなるといつもお母さんのこと考える。

お母さんはもっともっと辛かったのに。
なんにもできなかった…って。

いっぱい反省する。


お母さん。
ごめんね。



いつもはお母さんとの別れをポジティブに捉えているけど。

私もお兄ちゃんもお父さんも、強がり言ってるけど…

本当の本当はみんないっぱい反省してるんだよ。

だから許して…とは言わないよ。
でもね、できるならお父さんの後悔が少しでも軽くなってほしい…。

私には難しいよ。

だから、たまにはお父さんの夢に出て笑顔を見せてあげて☆


お父さんとお母さんが一緒に居た時間よりも長く、私はお父さんと居るんだよー☆
妬ける?

でも大丈夫だよ(^^)
お父さんは今でもお母さんのこと
大大大好きだから


私は勝てないよ。
だから安心して見ていてね。


この写真憶えてる?
お母さんが撮ったんだよ。


自分の愛する人が
自分の娘を
こんな愛しい目で見ている…

そんな姿を見ていたお母さんは
相当な幸せ者だね☆

お母さんが撮ってくれた写真はたくさんたくさん残っていて

そこに映っている私もお父さんもお兄ちゃんも本当に幸せそう。


この写真達は全部お母さんの見たもの。
お母さんの記憶の断片なんだよね。

そう考えると凄くドキドキする。

お母さんの身体は無いのに…
見たものがここに残ってる。

私もここに居る。


また10月には三人でお墓参りに行くね


もしかするとお兄ちゃんにはパートナーがいるかも(*^^*)

私は…?
その頃には映画が公開されてるね。


本当言うとめちゃめちゃ怖い…。


でも、あの映画は私がもっともっと強くなるために…。
お母さんが出逢わせてくれたんだと思ってるから。


だから頑張るよ!
強くなる!!


長くなっちゃった。


お返事は夢の中で下さいな。


ではでは…
また書くね。
おやすみなさい』