JR駅構内に展開される立ち食いそば屋・あじさい。
行雲流水-あじさい

中野駅店の朝を切り盛りするオバチャン(アラウンド還暦世代)は、完全にボクに惚れている。

ボクはほぼ毎朝「たぬき玉子そば」を注文するのだが、これの揚げ玉は必ず超大盛りで出されてくる。一見客の約2.5倍はある。
ありがたいが否かは別として、ただならぬ思い入れが揚げ玉を通して伝わってくる。
ある時、店に入ると客はボク1人だった。いつも通り注文をすると「ワカメ好き?」と聞かれた。「はぁ、まぁ」と答えると、揚げ玉の横にドッサリとワカメが盛られた。「どうぞ」とやや伏し目がちにそばを渡すオバチャンの顔には、頬を赤らめた乙女のような甘酸っぱいハニカミが浮かんでいた。
この日以降、ボクの朝は「揚げ玉大盛りワカメ添えそば」になった。

またある時は、となりの客がボクと同じタイミングでたぬきを注文したのだが、出されたものの差は歴然としていた。同じたぬきでもほとんど別物といっていい。藤原紀香と藤原組長くらいの差があった。

そんなある日─。
オバチャンの個別過剰サービスは頂点に達した。
たぬき玉子そばには通常生卵がひとつ入っているのだが、なんと玉子が2個入っていた。

…正直、迷惑だった。

育ち盛りの高校生ならともかく、こちとらメタボ路線をひた走る30過ぎのオッサンである。ただでさえ揚げ玉大盛りでカロリー過多なのに、生卵ダブルではコレステロールもオーバー摂取だ。妻に見られたら叱られてしまう。
オバチャンの愛、重すぎる。ボクらは少し距離を置いた方がよいのだろうか?

このように、ボクは昔から壮年期の女性に好かれやすいタチだ。仕事でもボクはおばぁちゃん方から非常によくモテる。祖父祖母と同居のもとで育てられたので、どうすれば年寄りに愛されるかを、計らずも身につけているのかも知れない。

もし65歳以上限定のホストクラブがあれば、立派に売り上げてみせる自信がある。
いいなぁ、シルバー限定ホストクラブ。

毒蝮三太夫、綾小路きみまろ、あたりがカリスマか。
「3番テーブルのババァから最高級玉露のボトルキープ入りましたぁ!」みたいな。

「誕生日とダンナの命日にはヨウカンでパーティー!」とか。
「月末は血糖値測定無料!」とか。


けっこうアイディア出るな。送迎サービスは「同伴」と呼ぶか。

1号店を構えるなら、やはり巣鴨だな。年金をいっぱい持ってきて欲しい。