初めて乗る東急多摩川線。蒲田から出る地味な電車だ。

現地の最寄駅は「矢口渡」という。

矢口

何て読むのかも分からないまま下車。
目的地はすぐに発見できた。

施設

今の今まで「老人保健施設」で話しをするのだと思っていたが、読むと「有料老人ホーム」とある。

かなり根本的な勘違いだが、だから今さらどうということもない。


施設はものすごく綺麗で、一流ホテルみたいだった。

普段は都内でも屈指のオンボロ病院に勤めているせいか、天国のように感じられた。


応接室に通されると、ホーム長の方があいさつに来てくれ、名刺を差し出された。

名刺交換の礼儀もよくわからないし、そもそもボクは名刺を持っていない。

とりあえず頂いた名刺をじっくり読み、スマイルを浮かべてみた。

財布を探って「あ、名刺切らしちゃいました!」くらいの小芝居をするべきなのか、あるいは心尽くしにBOOK・OFFの50円値引き券でもお渡しした方がよいのか…。

社会人としての常識に欠ける自分を呪ろいつつ、不自然なスマイルは数秒間続いた。

パソコンとプロジェクターの設定にやや難航したが、定刻通り講演開始。
職員の方や患者やそのご家族を前に、淡々と話しを進める。
人前でしゃべることには昔からあまり抵抗や緊張を感じない方だが、やはりみなさんの反応が気になる。
反応は…、イマイチだ。
「キョトンとした顔」とはまさにこういう顔だな、とうっすら感じながら、何とか最後までしゃべりきった。
みなさんの顔はキョトンのままだった。特に質問などもないようなので、淀みなく終了のアイサツを済ませる。パラパラとした拍手が胸に染みた。

反省しつつ、家路に着く。

やっぱり、ちょっと難しかったのかも…。

介護職の方がどの程度の医学的知識を持っているのかもわからないし、そもそも何を求められているのかも、正直最後までよくわからなかった。だからテーマも漠然としているうえに多岐に渡り過ぎた感がある。

依頼してくれた方と、もっと内容についての話をつめておくべきだった。

反省点は今後に生かすこととし、いい経験をさせてもらいました、ということで。