エミール・ガレのサイドテーブル修復(6) | Classic to Modern デコラティブアート的造形と家具作家の日記

エミール・ガレのサイドテーブル修復(6)

過去5回に渡ってご紹介して来た「エミール・ガレのサイドテーブル修復」も今回で最終回です。
当初考えていたよりも大変難しい修復でした。

修復前の状態は、天板エッジ部分にひどい修理の痕が見られ、
テーブル全体が魅力の無い焦げ茶に塗装されていました。
セラックニスで塗装された塗装面は傷や凹凸があり、象嵌細工や
木肌の美しさをひどく損なっていました。





この修復ではテーブルをオリジナルコンディションに戻し
完璧な塗装を施すことによって、このテーブルが持っている様々な魅力、
曲線を多用した複雑な造形の脚や天板エッジ、天板や棚板に施された
繊細な象嵌細工、経年変化により美しい飴色に変色した木部の色などを
最大限引き出してあげることでした。

先ずは修復前と修復後の比較画像をご覧下さい。

<テーブルエッジ修復>

元々機械加工されたテーブルエッジの形状に合わせ、
手加工で成形した「埋木」は完璧にマッチし、修復跡は全く分からなくなっています。

左/修復前、右/塗装剥離後




修復後




<テーブルトップ修復>
修復跡を隠す為に濃い色で塗装されたテーブルエッジや、煙草の焦げ跡
色艶を失った「象嵌」とテーブルトップも瑞々しく蘇りました。

修復前




修復後



フレンチポリッシュならではの美しい塗膜から生まれるガラストップのような映り込み。
これは均一で完璧な塗装面を持つ証拠です。




<修復完了>
時間だけが作り出せる美しい「パティーナ(古艶)」をしっかりと残しつつ
このテーブルが本来持っていた魅力を最大限引き出すことに成功しました。
小ぶりでありながら、様々なディテールが凝縮された見どころの多いテーブルですね。
本当に美しいです。










修復に限らずですが「良いものづくり」には「お金」は勿論、「時間」という
コストが掛かります。
現代においてこの「時間」を用意する事は大変難しいのですが、
こちらのオーナー様には十分な修復期間を頂き、このサイドテーブルにとって
これ以上ない完璧な修復を施す事が出来ました。

先日このテーブルを無事納品しました。
オーナー様所有の「エラール」のグランドピアノ、ガレの花瓶と一緒に
記念撮影。





仕上がりに大満足してくださり、修復のプレッシャーと苦労が報われました。


<過去記事>
エミール・ガレのサイドテーブル修復(1)

エミール・ガレのサイドテーブル修復(2)

エミール・ガレのサイドテーブル修復(3)

エミール・ガレのサイドテーブル修復(4)

エミール・ガレのサイドテーブル修復(5)