「アイルランドの薔薇」 石持浅海
「扉は閉ざされたまま 」の石持浅海さんのデビュー作とのことで、ずっと気になっていたものの、舞台は海外、登場人物も勿論カタカナ、そして南北アイルランド紛争という政治問題を扱ったミステリ・・・と、何から何まで私の苦手なもの揃い。
「むつかしそう!」と思い切り読まず嫌いしてしまっていたのですが、2007年第一回ネトミス例会で「2006年に読んだミステリベスト5」を各自発表した際、優騎さん
が挙げられているのを聞いて、やっと購入に至りました。
- 石持 浅海
- アイルランドの薔薇
- --------------------------------
南北アイルランドの統一を謳う武装勢力NCFの副議長が、スライゴーの宿屋で何者かに殺された! 宿泊客は8人――そこには正体不明の殺し屋が紛れ込んでいた。やはり犯人は殺し屋なのか? それとも……。宿泊客の一人、日本人科学者・フジの推理が、「隠されていた殺意」をあぶり出してゆく!
本格推理界に衝撃を走らせた期待の超新星の処女長編!
--------------------------------
苦手どころか、序章から一気に引き込まれ、頁を捲る手が止まらなくなりました!!
変則的なクローズドサークルを得意とする石持さんならではの、政治的理由による斬新な「嵐の山荘」状況。
そして舞台としてだけではなく、政治的背景による、登場人物達それぞれの思惑や慣習が事件を複雑にしていくという面白さ。
北アイルランド紛争を決して軽々しく扱ったりもしていなければ、社会派小説にはならない程度に政治問題を掘り下げている絶妙のバランスが素晴らしいです!!
今回はデビュー作だからか(?)変則的なクローズドサークルを作る為に考えられたような変な動機も無く、日本人科学者・フジのアクロバティックな論理展開は、久々に「やっぱり本格は面白い!」と思えるものでした。
また、犯人探しの他に紛れた殺し屋探し、というお楽しみ要素もあるのですが、これがまたニヤリとさせられる粋なサービス。
緊張感溢れるタイプの「嵐の山荘」ではないのですが、じんわりとした人間模様が非常に読ませられるもので、物語としても本格としても楽しませて頂きました。
読後感も良く、「面白かった!、とにかく面白かった!!」と言ってまわりたくなる作品。個人的には「扉は~」以上に好みの大ヒット。
「私的2007年に読んだミステリベスト5」には確実に入るであろうと思われます。
教えてくださった優騎さん
どうもありがとう!