「プレゼント」 若竹七海 | カラクリリリカル

「プレゼント」 若竹七海

完全に若竹さん強化月間のようになっているカラクリリリカルです。

しかし、若竹さん作品完全制覇を目標としているんですが、書店にあまり売っていないのが悩み・・・
先日TRICK+TRAPなら揃っているハズ!と思い、まとめ買いするイキオイで向かったのですが、逆に売り切れでしたw




若竹 七海
プレゼント

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ルーム・クリーナー、電話相談、興信所。トラブルメイカーのフリーター・葉村晶と娘に借りたピンクの子供用自転車で現場に駆けつける小林警部補。二人が巻き込まれたハードボイルドで悲しい八つの事件とは。間抜けだが悪気のない隣人たちがひき起こす騒動はいつも危険すぎる。
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読む順番が前後してしまいましたが、葉村晶フリーター時代の事件と、ピンクの子供用自転車がトレードマーク(?)小林警部補が捜査する事件が交互に描かれる連作短編集です。


葉村晶への思い入れが強すぎて、葉村の探偵前の様子や過去の恋愛に触れられるだけで大満足!なんですが、それぞれの短編のキレが抜群で、またまた大好きな一冊となりました。

葉村のキャラクターが魅力的すぎて、ちょっと小林警部補の印象が薄かった気はしますが、その分小林パートは倒叙形式で海外ミステリドラマ的面白さがあって良かったです。


特に「冬物語」は、雪の別荘の雰囲気がツボ!なんとなくアガサ・クリスティの「マウストラップ」の別荘を思い出しました。
(昨年会長の薦めでシェイクスピアの「冬物語」、本と劇を見たので楽しさもひとしおw)


葉村パートの悪意の描き方はやはり見事!これぞ若竹さん、という悪意の苦味が一級品。
裏表紙に「間抜けだが悪意のない隣人」とありますが、悪意ありまくりじゃないでしょうかw
私はコーヒーはほとんど飲まないのですが、コーヒーの苦さが癖になるってこんな感じ?苦いけれど雑味が無く深い味わいのあるコーヒーのイメージです。


この本の中で一番印象深かった「ロバの穴」の悪意は強烈。
他人の愚痴を電話で聞く、という奇妙な仕事に就いた葉村が巻き込まれる事件は、シリーズ中でも1・2を誇りそうな人間の心の闇の深さを感じました。タイトルも最高ですね。

最終章では、小林警部補と葉村晶が競演(?)しますが、読み終わって表紙を見るとカバー画の杉田比呂美さんのセンスの素晴らしさにも惚れ惚れしてしまいました。

人に贈るには苦すぎるプレゼントかもしれませんが、私にとっては若竹さんから最高の贈り物を頂いた気分です。