黄昏はいつも優しくて3 ~第122話~
「ずいぶん身勝手な言分(いいぶん)ね」
「本心だ」
「あなたをみていると、ほんとむかつくわ」
美樹が顎をつきだし「で、どうするの」と、鋭い眼光で問いかけてきた。
「警察にでも行く?」
「オールオーバーだ」
「………」
「あんたがストーカーの正体なら貴子に危険が及ぶことはない。俺は手をひかせてもらう」
美樹が拍子抜けしたようすで、篠塚の顔をまじまじとみた。
実際、これほど簡単に篠塚が引き下がるとはおもっていなかったのだろう。いま彼女の頭の中で、にわかに現実的思考が働きだしたはずだ。事実を暴露されると、これまでの友情に亀裂がはいるのは必至だろう。
「わたしのこと、彼女にいうの」
「さて。どうするか」
「いえばいいじゃない。……わたし、絶対、後悔なんてしないから」
言葉とは裏腹に、美樹が白い顔に困惑の色をうかべた。その様子をみて篠塚が身をおるようにして失笑した。
「なによ」
「カサブランカのストーカーなんて最初からいなかった」
「え」
「事実、いなかったろう」
「彼女にいわないつもりなの」
「なかった事実は話せない。もう帰ってくれないか」
「篠塚さん……」
はじめて美樹が篠塚の名を口にした。
だが、篠塚はそれには答えず瞬の名を呼んできた。我にかえり、あわてて「はい」とこたえる。
「珈琲を淹れてくれ。冷めてしまった」
「はい」
篠塚の珈琲カップを手にしてキッチンへといく。
美樹がおずおずと腰をあげた。そのままリビングのドアまでいき篠塚を振りかえる。
篠塚は美樹をみようとはしなかった。
美樹が玄関へとむかう。
やがてドアの開閉の音がきこえてきた。
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