黄昏はいつも優しくて3 ~第55話~ | 活字遊戯 ~BL/黄昏シリーズ~

黄昏はいつも優しくて3 ~第55話~

 突然、デスクの上の携帯電話が鳴りだした。後ろ髪を引かれるおもいで篠塚から離れる。電話にでると、いきなり「雅人くんは傍にいるのかね」と訊いてきた。間宮の声だ。
「あ……はい」
「いいかい。相手がわたしだと雅人くんに知れないようにして欲しいんだ」

 なんだろう……。
 篠塚に「すみません、親戚からです」とことわり、執務室をでた。
「すまんね」
「いえ」
「急な用件で悪いんだが、今夜、時間をとってくれないかい」
「今夜ですか」
「きみに折り入って話しがあるんだが。どうだろう」
 間宮は今夜八時、銀座にあるホテルのロビーを指定してきた。「わかりました」とこたえ電話を切る。篠塚に内密で間宮が瞬に話したいこととはなんだろう。やはり孫娘・雪乃との縁談のことだろうか。気が重いが篠塚のためにも断るわけにはいかなかった。
 部屋にもどり篠塚に今夜は予定がはいったのだと告げる。篠塚がうかがうような面持ちで「親戚でもくるのか」と、訊いてきた。先刻、親戚からの電話だといったのを思いだした。
「はい」
「そうか」

 夜、七時半まで仕事をし篠塚と一緒に執務室をでた。篠塚とエレベータにのりこむ。篠塚が地下のボタンを押したところで「ぼくは」と、声をかけた。
「ん?」
「銀座で待ち合わせが」
「親戚とか?」
「……はい」
 篠塚が、さすがに今度は疑々とした視線をむけてきた。
「なんだ、歯切れが悪いな」
「そんなことは」
 それきり篠塚は口をつぐんだ。
 もっと訊いて欲しいという思いと、訊かないでくれという思いが交錯する。
 ぼくはいったい何を求めているんだ……。
 複雑な気分で約束のホテルへとむかう。本当なら今頃、篠塚の車の助手席に背をうずめ、ほのかなムスクの香りに身をゆだねているはずだった。
 ロビーのソファに腰掛け過ぎる人々を眺める。しばらくして間宮が姿をあらわした。



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