kiss scene177
「専務」
走りより脇をささえる。そのままソファに座らせると京介がいくぶん不機嫌に見上げてきた。
「どうして、あんな無茶をするんだ」
苦笑して京介の横に腰をおろす。榛名の態度が気に入らないのだろう。京介が「あまり心配させるな」といって、頬のあたりをふくらませた。
「はい」
叱られようが嫌われようが、いまは京介が無事であるならばそれでいい。
もともと優しげな面差しなのだが、体の自由がきかないことが、さらに京介を若く頼りなげにみせていた。身を捨てても守りたい。どうしようもなく愛しい。人目もはばからず両腕で抱きしめたい衝動にかられた。
「榛名さん、ご苦労様でした」
斉藤の低い声がおりてくる。表情をひきしめ「はい」と答えた。
斉藤が京介の腕をとり部屋へとむかった。現実に引きもどされた気分で二人のあとにつづく。京介と二人きりになるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
「池田部長?」
「はい。ディズニーランドのゲートにいました」
「見間違いでしょう」
「しかし、たしかに」
「似ているひとは沢山います」
「………」
部屋にはいり斉藤に池田の報告をしたのだが、斉藤はどういうわけか一向にとりあわない。妙な気がした。池田は孝之サイドの人間だ。どうして榛名たちをリークしたのが池田ではないと断言できるのだ。
「池田はここのところ出社していないんだろう」
ベッドに横になっていた京介がいった。京介も斉藤の反応に疑問をもったらしい。
「危険を察知して身を隠したんでしょう」
「どうしてそこまで榛名の情報を否定するんだ」
斉藤がめずらしく押し黙った。
なにかある……。
斉藤の携帯電話が着信したらしい、斉藤がポケットからとりだし短く相槌をうちだした。
「ロビーに?」
いって斉藤が携帯電話をとじた。
「どうしたんだ」
「メンバーがロビーに集まっています」
「どうしてここが」
「アイから各自にメールがはいったそうです」
「アイ?」
「トラップかもしれません」
「どうしてアイが」
「アイとは本社の池田です」
「なに?」
「池田がアイなんです」
「………」
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