second scene126 ~encore3~
「帰るって……どこをどうおせば、そんなセリフがでてくるんだ」
徒労感と後悔で話す気力も残っていなかった。布団から抜けでると篠塚が強引に腕をひいてきた。
「ちょっと待て」
振り払おうとするが、いっこうにゆるむ気配がない。いつもこのパターンだ。瞬が拗ねて帰るという。決まって篠塚がひきとめてくる。なにもかもが茶番におもえてきた。
「もういいですから」
「なにがいいんだ」
「もうやめます」
「やめる……? 俺との関係をか」
「はい」
「理由は」
「嫌だから」
きっと篠塚は腕を離し「そうか」と、言ってくるだろう。引き止めてくるほど恋愛にのめりこむタイプではない。つねに醒めているのだ。でなければ、過去、あれほどにも多くの女性とつきあえるはずがない。
篠塚がこれみよがしに溜息をもらした。
「すこしからかっただけだろう。怒ったのならあやまる」
からかった……。
しごく自尊心を傷つけられた気分だ。同時に抑えようのない怒りがこみあげてきた。
「ぼくには、からかう余裕なんて……」
いいながら羽根枕をつかみ篠塚めがけて叩きおとす。
「ぼくはいつだって篠塚さんのことを真剣に考えているのに。なのにどうして」
涙があふれでた。拭う気にもならない。なんども枕を振りあげては篠塚めがけ叩きつける。篠塚はだが抵抗してこなかった。
「どうして、こんなところで、からかわれなくちゃならないんですか!」
そのうち息が切れてきた。枕をベッドの脇にほうりなげ肩で呼吸をくりかえす。
篠塚が「気がすんだか」と、いって微笑んだ。
バスローブがはだけ右肩があらわになっている。笑うほど無様な姿なのだろう。だがこれが本当の自分なのだ。いつも他者との関係に不安をかかえ生きてきた。結局、すべてをすて身を投じた篠塚との恋でさえ、篠塚を受け入れることも、自身を受け入れられることもなく終わっていくのだ。
もう、ぐちゃぐちゃだ……。
子供じみた醜態をさらした後だ。とりつくろう気にもなれなかった。
「瞬」
搾りだすようにして「もうやだ」ともらす。篠塚に背をむけたとたん背後からかかえこむようにして抱きしめられた。
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