second scene78
窓越しの朝の陽射しで目が覚めた。篠塚の寝室の天井だ。ベッドのサイドテーブルにある時計をみて、あわてて飛びおきた。
「痛っ……」
腰の痛みに顔をしかめ、ふたたびベッドに寝転ぶ。骨が軋んで音をたてそうだった。そろりと上体をおこし服をさがす。壁に一式、まとめて掛けてあるのが見えた。
篠塚さん……。
昨夜の情事を思いだし顔があつくなった。それほど体に負担がかかっていたのだろうか。いつの間に寝てしまったのだろう。
足音が近づいてくる。あわてて布団を羽織ると、ドアがひらいて篠塚が顔をのぞかせた。
「瞬、起きているのか」
「……はい」
篠塚と一緒に珈琲の香りがなだれ込んできた。
篠塚がベッドに腰掛けてくる。冬の朝のやわらかな光の中、篠塚の微笑はそれにもまして優しくて。瞬がまぶしげに目をふせると篠塚が頬にくちづけてきた。
「体は辛くないか」
とたんに頬がほてりだした。
「いえ」
「珈琲がはいってる」
「はい。……あっ」
「なんだ」
「会社」
篠塚が苦笑して「今日は土曜だ」と、いってきた。そうだった。
「今日は暖かい。朝食はバルコニーで食うか」
「はい」
なんのまえぶれもなくニューヨークの生活が蘇ってきた。
休日は、いつも篠塚が朝食をつくってくれた。厚切りのベーコンステーキに目玉焼き。硬めのフランスパンにコンソメスープ。ベランダから見わたすニューヨークの街はスクリーンをみているようで、篠塚と瞬をとりまくわずかな空間だけがすべてだった。
懐かしい……。
あの頃の気持ちに戻れるだろうか。
「どうした」
「もう一度」
「ん」
「昨日の……言葉を……」
なにをいっているんだ、ぼくは……。
まるで女子大生のそれだ。房事のことを蒸しかえして何になるのだ。
「いえ。いいんです」
ベッドから起きだし、ぎこちなく立ちあがる。篠塚が座ったまま腕をまわしてきた。
「愛してる」
「………」
「愛してる。おまえしかいない」
篠塚がみあげてくる。瞬は身をかがめると、篠塚にもたれかかるようにして抱きしめた。
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