second scene70
瞬が馳走になった夕食のことで礼をいうと、北沢が「どういたしまして」と、例の気の置けないようすで答えてきた。
「ところで、今夜なんだけど、あいてるかな」
篠塚をちらと見る。篠塚は頬杖つき、なにやら考え込んでいるようすだ。
「……たぶん」
「わかったら連絡してもらえる?」
「はい。あの」
「なに」
篠塚がグラスに手をのばし、ふと視線をなげてきた。
「……いえ」
「それじゃ、連絡待ってるから」
不通音が流れだした。いったいなんだろう。腑に落ちない面持ちで携帯電話をポケットにもどす。篠塚が「誰からだ」と、訊いてきた。
「友達……」
言いかけて口をつぐむ。先日、友達と一緒だといって「北沢と一緒だったのか」と、篠塚に言い当てられたばかりではないか。
「瞬、おまえ」
「はい」
「いや、いい」
それきり会話は途絶えた。
午後四時をすぎた。北沢に連絡をとるため給油室に向かうふりをして執務室をでる。着信履歴から北沢の番号を確認していて、ふと疑問におもった。北沢に携帯電話の番号を教えた記憶がない。名刺交換はしていないはずだ。北沢はどこで瞬の番号を知ったのだろう。
「徳川くん?」
北沢の声に心なしか安心する。篠塚の沈黙に辟易としていたところだ。やはり会話がないのは辛い。
「今夜、大丈夫です」
「そう。退社は何時ごろになるかな」
「定時に出られるとおもいます」
「じゃあ、迎えに行くよ」
「え?」
「キエネのまえに」
「でも」
「篠塚先生にみられたらまずい?」
「……いえ」
「じゃあ、五時に」
「はい」
夕食の誘いかな……。
肩で息つき携帯電話をとじる。理由を訊いたところで夕食だといわれればそれまでだ。妙に勘ぐるのもいただけない。少なくとも北沢は瞬に対しては悪意をもっていない。そんな気がした。
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