second scene48
雨のせいもあるのだろう、一階にあるカフェはかなりの混雑ぶりだった。壁際にあるバーに並んで座ると、待ちかまえていたかのようにウェイトレスが注文をとりにきた。珈琲をたのみ水をひとくち飲む。先刻の北沢の言葉がひっかかっていた。
「あの」
「なに」
「篠塚さんの心情って」
北沢が周囲に視線をめぐらせ両肘をカウンターにのせた。
「ぼくが徳川くんをみたのは、じつはリメインという雑誌が最初じゃないんだ」
「いつ……ですか」
「先月のはじめ、港区のホテルで」
来月のはじめといったら帰国してすぐだ。その頃、篠塚に同行した港区のホテルといえば、フロステックの新社長就任披露パーティのことだろう。晴香が勤めている会社だ。
「フロスティックのパーティですか」
「ぼくは、そのパーティには出席していない」
「それじゃ」
「ホテルの駐車場で」
胸が激しく動悸を打った。
まさか……。
あの日、ホテルの駐車場で篠塚とキスをして抱きあった。ほんの数分のことだが、二人の関係を知るに十分な行為だろう。
ウェイトレスが珈琲を運んできた。北沢がゆっくりと一口のむ。冷や汗がふきだした。否定のしようが無いではないか……。
「あの時は秘書だとは知らなかったんだ。顔もよく見えなかったしね。リメインをみて君だとわかった」
話の方向が見えない。何らかの取引材料にでもしようというのだろうか。
「篠塚さんには失望したよ。まさかそっちの気があったなんて」
迂闊(うかつ)だった……。
ここは日本だ。周囲にもっと気を配るべきだったのだ。どこに誰の目があるかわからない。黒岩の出現もある。篠塚の立場は極めて微妙だ。いま社内に妙な噂でも流されようものなら、たちまち役員会の耳にはいるだろう。それだけではない、瞬は今後二度とおなじ職場で働けなくなる。
「……と、そのときは思ったんだけどね」
「なにが言いたいんですか」
「君をみて気が変わった」
「それは」
「君ならわかる」
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